宇佐市院内町にある西椎屋地区の起伏に富んだ風景を見下ろす展望所からの風景。円錐形の山を背景にした集落の景観が南米ペルーのマチュピチュに似ていることから「宇佐のマチュピチュ」と呼ばれている。
Photographs●田丸瑞穂
SUBARU on the Road
ダイナミックな風景の中へ。九州冬の旅
大分県中津市~由布市
宇佐市院内町にある西椎屋地区の起伏に富んだ風景を見下ろす展望所からの風景。円錐形の山を背景にした集落の景観が南米ペルーのマチュピチュに似ていることから「宇佐のマチュピチュ」と呼ばれている。
Photographs●田丸瑞穂
昨年の秋に発売されたばかりのWRX S4 STI Sport R EXで、冬の九州、大分県を走った。温泉地が各所にあり、海岸線と山々に囲まれた大分県は、走りがいのある表情豊かな道にも恵まれている。そんなこの地ならではの風景を探して別府をスタートし、宇佐市を経て観光客で賑わう由布市湯布院町へ向かうプランを立てた。外は凍てつく寒さ。時折みぞれが舞う厳しいコンディションであったが、WRブルー・パールのWRX S4は、頼りがいのある走りで安心感に満ちた快適なツーリングへと誘ってくれた。
岩と石がつくり出した、
景観美を巡る
海から一気にせりあがる斜面のそこかしこから白い温泉蒸気が立ち上る、別府の街ならではの風景を車窓から見上げつつ、国道10号を北上する。東九州自動車道に入り、WRX S4 STI Sport R EXのドライブモードセレクトを『Comfort』にセットした。その乗り心地は想像した以上に質感が高く、道路の凹凸やうねりを越えたときの挙動もとても滑らかかつジェントルだった。
競秀峰[きょうしゅうほう]の下に設けられた“青の洞門”を走り抜けるWRX S4 STI Sport R EX。
旅人を苦しめる交通の難所で一歩踏み外すと人や馬が山国川に転落するため、見かねた禅海和尚が托鉢によって資金を集め、雇った石工たちとともにノミと槌をふるって30年をかけて掘ったトンネル。一部の明り採り窓などに、当時の面影を残す手彫り跡が残っている。
中津ICで高速道を降り、山国川に沿った国道212号に出て上流に進むと、屏風のように連なる巨大な岩が目の前に立ちはだかった。そこは垂直に切り立った奇岩群が約1キロにわたって連なっている競秀峰という名勝地だ。下流側には“青の洞門”と名付けられた洞門がある。狭い洞門は片側交互通行でクルマで走り抜けることができ、ちょっとした冒険気分を味わうことができる。取材時は平日の朝とあって人影はまばらだったが、広い駐車場も整備されており、下から見上げるだけでなく奇岩の峰々を巡る探勝道を散策できる愉しそうな観光スポットだった。
山国川を挟んだ対岸から眺めた競秀峰。
競秀峰からは国道500号に入り宇佐市院内町を目指す。国道500号は途中から道幅の狭いワインディング路となる。ここでドライブモードセレクトを『Sport』にチェンジすると、ステアリングの剛性感がアップして、よりダイレクトな制御ができるようになった。ダンパーの減衰力も高まって、タイトコーナーでもフラットな車両姿勢を維持してくれるので安心感が高く、気持ちの良いステアリングワークを愉しむことができた。
大分県は全国で最も石橋が多い地域だそうだが、中でも院内町には江戸末期から昭和初期にかけて架けられた石橋が75基現存しており、このうちアーチ橋は64基と日本一の数を誇っている。深い谷に集落が点在する独特の地形や、川が急流なので頑丈な石橋が求められたこと、石橋造りに必要な石が豊富に採れたことなど、院内町ならではの背景があるという。クルマでアクセスできる橋を何カ所か探し訪ね、カメラに収めた。
宇佐市院内町にある鳥居橋。架橋は1916(大正5)年。橋長55.15mの5連アーチ橋。天に伸びる細くて長い橋脚から「石橋の貴婦人」と称されている。
院内町余谷(あまりだに)地区の急斜面に広がる「両合棚田」。東側の滝貞(たきさだ)集落、西側の小平(こびら)集落の間を流れる川には大正時代に架けられた石橋「両合川橋」がある。
温泉地で余生を過ごす、
愛されたクルマたち
院内町の急峻な谷地に設けられた棚田や谷あいの集落を望む展望所を巡り、県道28号沿いにある景勝地深耶馬渓[しんやばけい]に立ち寄ってから、陸上自衛隊日出生台[ひじゅうだい]演習場に沿った景観の良い道を抜けて由布市湯布院町に向かった。
山国川の支流・山移川の渓谷沿いを走る県道28号沿いにある景勝地「深耶馬渓(しんやばけい)」。一目八景(ひとめはっけい)展望台からは群猿山や鳶ノ巣山、夫婦岩などの奇岩や断崖を一望することができ、新緑や紅葉の時期には多くの観光客で賑わう。
旅の二日目は湯布院にある九州自動車歴史館を訪ねた。ガレージを思わせる外観の建物は、湯布院でも随一の賑わいを見せる湯の坪街道のひとつ裏の通りに位置し、取材時も多数の観光客が訪れていた。観光バスから降りてくる人たちのほとんどは若者で、中にはちらほら家族連れの姿もある。「1988年にここで九州自動車歴史館をオープンしたときとはだいぶ様変わりしましたね」館長の水澤省史[みずさわしょうし]さんはそう話す。東京都世田谷区で映画やテレビドラマの撮影用に車両を貸し出す仕事をしていた水澤さんは、バブル期の地価高騰をキッカケに当時所有していた車両と共に故郷の大分県に引っ越し、自動車の博物館をオープンすることにした。当時湯布院町には温泉宿はあったが観光客が気軽に立ち寄れる場所が少なく、現在のような賑わいはなかったという。「温泉に宿泊した人もそうでない人も立ち寄れるような、美術館や博物館が欲しいという町の要望もあり、観光地として成長途上のこの場所でオープンすることにしたのです」と、水澤さんは話す。当初35台の車両と10台の二輪車のコレクションでスタートしたが、今ではそれぞれ70台、40台へと増えた。ここ数年で客層も変わり、クルマを熱く語る年配客に代わって、若い世代やファミリーが増えているため、それに合わせて展示車種やレイアウトも変えているのだそう。
1階「高級車・スポーツカーコーナー」には世界各国のスポーツカーが展示されている。このうち何台かは現役で、時折水澤さんの運転で付近を走行するそう。
昭和レトロな雰囲気が漂うエントランス。
1階「懐かしの名車コーナー」では、郵便配達車仕様の富士重工製ラビットを発見!
スバルサンバーは、かつて群馬県太田市のスバルの工場にあった消防ポンプ車の色を塗りなおしたもの。
2階「ルート66」では世界中から集められた1000種以上のミニカーが展示・販売されている。
写真の水澤館長が展示車の中で最も思い入れを持つ1台がスバル360。バンパーが左右2つに分かれた初期のモデルで、水澤さんが生まれて初めて運転したのがこれとまったく同じ型のモデルだったという。
2階建ての館内は空間が限られているため、展示車同士の間隔は広くないが、コーナーごとに背景画や当時のカタログ、ポスターほか時代を感じさせるアンティークな品々が多数展示されていて、一つひとつ見ているとあっという間に時間が経過してしまう。隅々にまで気を配った展示からは、水澤さんのクルマへの濃密な愛情が伝わってくる。
世界各国の自動車メーカーのロゴデザインをあしらったキーホルダー。中には、昔のSUBARUのロゴのものもあった。
山間の盆地にある由布市湯布院町は、朝霧や濃い霧が発生することで知られている。
別府市内~競秀峰~鳥居橋~両合川橋~両合棚田~宇佐のマチュピチュ展望所~
深耶馬渓~一目八景展望台~九州自動車歴史館
九州自動車歴史館
住所:大分県由布市湯布院町川上1539-1
TEL:0977-84-3909
営業時間:9:30-17:00(平日16:30)
休館日:祝日以外の木曜日
入館料:大人 1,000円(消費税込み)
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