大阪平野の夜景を車内から望むことができる十三峠展望広場。近くに信貴生駒スカイラインが走っている。Photographs ●小川 宏子
SUBARU on the Road
暮らしが生み出す光の絶景
大阪府豊中市~大阪市~東大阪市~八尾市~堺市
大阪平野の夜景を車内から望むことができる十三峠展望広場。近くに信貴生駒スカイラインが走っている。Photographs ●小川 宏子
外出するのが億劫になりがちな冬。しかし夜が長く空気の澄んでいる冬は夜景を楽しむにはうってつけの季節だ。今回、夜景ツーリングの舞台に選んだのは大阪府。ドラマのロケ地としても使われている千里川土手からスタートし、山間部、沿岸部を巡っていく。旅の相棒には、視界がよく、車内からの夜景も思う存分楽しめるマグネタイトグレー・メタリックのレヴォーグGT-H EXを選んだ。
光り輝く夜の色
大阪の夜景を楽しむプランを立てるに当たり、2017年1月号の「冬の夜景クルージング・甲府/東京」でもお世話になった夜景写真家・岩﨑拓哉さんにアドバイスをお願いした。
「大阪の夜景といえば道頓堀や通天閣周辺のネオンのイメージが強いですが、それはごく一部にすぎず、空港、ジャンクション(JCT)、工場など、実は夜景のバリエーションが豊富です。さらに山間部と市街地が比較的近く、生駒[いこま]山や五月山では迫力のあるパノラマ夜景を楽しめます」と自身の出身地でもある大阪の夜景の魅力を教えてくれた。そこで今回は山間部、沿岸部まで足を延ばし大阪の夜景を堪能できるプランを作成した。
「遅い時間になるとフライトが少なくなり、駐車場が空いていない可能性もあるので、千里川土手から夜景を巡るのがおすすめです」とアドバイスいただき、まずは千里川土手へ。名神高速道路豊中南ICから5分程で到着する千里川土手は、大阪国際(伊丹)空港に離着陸する飛行機を間近で楽しめる、飛行機や空港好きにはたまらない場所だ。遠くの空に機影が見えたかと思うと、徐々にその姿が大きくなり、ものすごい轟音とともに一瞬で頭上を通りすぎていく。日没後、あっという間に暗くなり、緑、赤、オレンジといった光に照らされた滑走路はなんとも幻想的な雰囲気に。その様子を写真に収めようと、平日の夜にもかかわらず多くの人が土手に集まりカメラを構えていた。学校が早く終わり自転車で来たという中学生や有休を取っては全国の空港で撮影をしているサラリーマンなど世代は様々だった。
千里川土手で出会った前川和哉さんが撮影した一枚。千里川土手は滑走路より少し高い位置にあるため、地平線に光を散りばめたような夜景を楽しむことができる。
阪神高速道路経由で次に向かったのは東大阪市役所本庁舎。地上約100mにある22階の展望ロビーからは、東に生駒山、西に大阪市内の高層ビル群、南に阪神高速道路と近畿自動車道が交差する東大阪JCTを望むことができる。ここからの風景は日本夜景遺産事務局が選定する夜景遺産の一つにも認定され、キラキラと輝く街の灯りの中でクルマのライトや道路照明に照らされた東大阪JCTがひと際存在感を放っていた。
東大阪市役所本庁舎へ向かう途中にある阿波座JCTは複雑な立体交差が美しく、夜になるとよりドラマチックな印象に。見る場所によって雰囲気ががらりと変わるので、移動しながら夜景を楽しむのもおすすめ。
ほぼ真上からJCTを見ることができる展望スポットは全国的にも珍しい。
東大阪市役所本庁舎の展望ロビーでの撮影は南側から東大阪JCT方面のみ可能。
いつもより少し夜更かしして
続いては信貴[しぎ]山、生駒山の稜線を走る全長約20.9kmの信貴生駒スカイラインへ。夜景を楽しめるスポットが複数あり「夜景のメッカ」として親しまれている。岩﨑さんが「関西では六甲山と双璧をなすパノラマ夜景」と紹介してくれた夜景は、視界いっぱいにカラフルに輝く光が広がった。スカイラインを後にし、車内からも夜景を楽しめると人気の十三峠展望広場に立ち寄る。夜のワインディングでもコーナー先まで照らしてくれるステアリング連動ヘッドランプのおかげで安心して走ることができた。
信貴生駒スカイラインのパノラマ展望台では、ベンチに座りながら壮大なパノラマ夜景を楽しむことができる。
有料道路を使わずアクセスできる十三峠展望広場の前列では、車内からも夜景を楽しめる。大阪方面からの道は狭いため、初心者ドライバーは奈良方面から行くのがおすすめ。
※信貴生駒スカイラインの十三峠駐車場から撮影したものではありません。
時間的な制約の少ない工場夜景を最後にするのが岩﨑さんの夜景巡りのコツ。最後に巡るのは堺泉北[さかいせんぼく]臨海工業地帯だ。大阪湾近くに位置し、堺市・高石市・泉大津市などにまたがる広大な工場地帯で、京阪神屈指の工場夜景スポット。工場のきらびやかな灯りが無機質で非日常的な景色を作り出していた。
築港浜寺西町からの眺め。埠頭(ふとう)の先端部にあるため、フェンス越しにはなるが、海を挟んだ対岸の工場群を車内から楽しむことができる。
少し遅めの晩御飯を食べようと、堺泉北臨海工業地帯からクルマで10分程のところにある堺魚市場へ。お目当ては23時営業開始の「天ぷら大吉 堺本店」だ。魚の仲買人のための深夜営業店として始まったこちらのお店では、堺魚市場で仕入れた鮮度の良い魚を使った天ぷらがいただける。揚げたてサクサクの天ぷらを大根おろしたっぷりのつゆにくぐらせて一口。深夜に揚げ物を食す背徳感を抱きつつも、その美味しさに箸が進み、あっという間に完食してしまった。名物「あさりの味噌汁」は旨味たっぷりで、冷えた体に沁みる一杯だ。
天ぷら盛り合わせは品数以外おまかせなので、何が出てくるだろうと待ち時間さえも楽しい。写真は「中吉盛り(15品・¥2500)」(海老、蟹棒、穴子、牡蠣、明太子、イカ、チーズ、うずら、出し巻玉子、アスパラ、シシトウ、南瓜、紅生姜、茄子、玉葱)。天ぷら盛り合わせは他に「小吉盛り(7品・¥1300)」「大吉盛り(23品・¥3600)」がある。
岩﨑さんが夜景に魅了されるきっかけの一つとなった阪神高速湾岸線(上り)からの工場夜景を楽しみながら帰路に就いた。今回巡ったどの場所もイルミネーションのように見てもらうことを前提とせず、暮らしの中で生まれた光が心を動かす絶景を作り出している。旅をする時間帯や視点を変えるだけで、こんなにも非日常感のある景色と出会えるのかと改めて気づかされた旅となった。
岩﨑拓哉(夜景写真家)
1980年大阪府大阪市西区生まれ。現在は神奈川県川崎市在住。国内最大級の夜景スポット情報サイト
『夜景INFO(https://www.nightview.info/ )』を運営。現在、同サイトでは全国約2500ヶ所の夜景スポットを紹介しており、エリア、ジャンル、フリーワードでお好みの夜景スポットを検索できる。
著書『夕景・夜景撮影の教科書』
(技術評論社)
夕景・夜景の撮影に挑戦したい方に役立つ基礎知識を紹介。
千里川土手~阿波座ジャンクション~東大阪市役所本庁舎~信貴生駒スカイライン~十三峠展望広場~築港浜寺西町~天ぷら大吉 堺本店
注)新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため、営業時間・営業内容に変更が生じる場合があります。事前に各スポットへお問い合わせください。
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