

八戸市街から太平洋側に抜けて、種差海岸に向かう県道1号(うみねこライン)は、絶景ポイントが点在する爽快なドライブルートだ。
Photographs●田丸瑞穂
SUBARU on the Road
SUBARU BRZで訪ねる
夢とロマンに触れる旅
岩手県一戸町〜青森県八戸市〜三沢市
八戸市街から太平洋側に抜けて、種差海岸に向かう県道1号(うみねこライン)は、絶景ポイントが点在する爽快なドライブルートだ。
Photographs●田丸瑞穂
岩手県一戸町〜青森県八戸市〜三沢市
八戸市街から太平洋側に抜けて、種差海岸に向かう県道1号(うみねこライン)は、絶景ポイントが点在する爽快なドライブルートだ。
Photographs●田丸瑞穂
長くて厳しい暑さが続いた夏もいち段落し、朝夕は涼しい風を感じることができるようになってきた。と、想っていると早くも初冠雪の便りが聞こえてきた。今年の秋は短く冬の訪れは案外早いのかもしれない。短い秋を堪能しようと選んだのはWRブルー・パールのSUBARU BRZ。八戸を起点にして大空への挑戦の足跡と縄文の歴史ロマンを訪ねるツーリングに出かけた。
八戸の町をスタートし、東北自動車道八戸線を南へ。一戸ICを降りて国道4号を南下して約5分で御所野縄文公園の入り口が見えてくる。駐車場にSUBARU BRZを駐めると、ボランティアガイドの髙橋陽子さんが迎えてくれた。一戸町内の人たちを中心に構成された『御所野遺跡を支える会』のメンバーで、御所野縄文公園で開催されるイベントのサポートや、今日のようなガイドを行っている。
北海道と北東北の形を縄文文化のパワーを象徴する渦巻の形でつないだ縄文遺跡群のロゴマーク。このエリアにある17の縄文遺跡群が2021年7月にユネスコ世界文化遺産として登録された。
御所野遺跡駐車場から眺めた「きききのつりはし」の入り口。
今回、遺跡を案内してくださったボランティアガイドの髙橋陽子さん。「地下の真実、地上のロマン」は、髙橋さんがこの遺跡を案内する中で思いついた言葉だ。
「ここを歩いていくことで5000年前にタイムスリップすることをイメージして造られた橋です」駐車場と公園とを結ぶ屋根付きの木製吊り橋『きききのつりはし』を歩きながら髙橋さんはそう話してくれた。光の差し込む窓と木製屋根とが交互に続く橋を抜けると日射しが降り注ぐ緑の空間が現れた。元は畑だった御所野遺跡は1989年に遺跡の一部が発見され、1993年に国の史跡に認定された。76000㎡の敷地内に復元された竪穴式住居は、他の遺跡で見慣れた茅葺きではなく土で覆われている。「出土品を詳しく調べた結果、栗の木で組み立てた柱と屋根の上に土を載せていた証拠が出てきたのです」と髙橋さん。こうすると夏は涼しく冬は暖かい住環境が整うという。
駐車場と御所野遺跡とをつなぐ120mの木製吊り橋「きききのつりはし」は、岩手県産のカラマツで造られている。
先祖を祀った墓地。置かれている石は出土したときのままの状態で、縄文の人たちが置いたものだそう。この石の下はまだ発掘の手が入っていない。
「建物の位置や内部のレイアウトまで遺跡から確認できたことを忠実に再現しているのが御所野遺跡の特徴です。そこで分かったのは土地の一番良い場所にお墓があってその周りを住居が囲み、家の間口はお墓に向けて造られていたことです。先祖を大切にする日本の文化の礎がこの時期に築かれていたのです」
現在まで建物跡が確認されているのは敷地全体の38%ほど。その中で詳しく調査が行われたのは18%だそう。ただ、確認できないところにも歴史のロマンがあると髙橋さんはいう。「地下には過去の真実があり、それを発掘し研究して祖先の暮らしぶりに想いを馳せるのは地上に住む私たちのロマンです」その語り口からは、この場所と生まれ育った土地に対する敬意と愛情を感じることができた。
屋根まで土で覆われた竪穴式住居が御所野遺跡の特徴。
入り口を入ってすぐのところに炉が切られているのも発掘した状態を忠実に再現したものだ。
御所野縄文博物館には、さまざまな出土品が展示されている。
堅い栗の木も初夏になれば柔らかくなり、復元した石斧でも人力で伐ることができることを実証した。写真はその伐り跡。
八戸に宿泊し、二日目の朝は海沿いをドライブ。南に進むと蕪島や種差海岸などの景勝地を巡る爽快な走りを愉しんだ。午後は進路を変えて北に進み、国道338号に入り三沢市へ。三沢空港に隣接した青森県立三沢航空科学館を訪ねた。
三沢市大空ひろばの外周路を走るBRZと富士重工業製のT-3初等練習機。
2003年に開館した同館は2年前にリニューアルし、館内に7機、館外の三沢市大空ひろばに11機を展示している。大空ひろばは入場無料で公園やドッグランもあり、市民の憩いの場になっている。また、駐車場にクルマを置いて展示機を背景に写真を撮ることもできる。SUBARUに関連のある展示品としては、富士重工業製の初等練習機T-3がある。ここでは見るだけでなく、コクピットに座ることもできるので、視界や操縦席の座り心地なども体感することができる。コンパクトな機体のコクピットに座って操縦かんを握ってみると、先ほどまで運転していたSUBARU BRZのシートのフィット感や、眼前に広がる広い空の見え方が、どこか共通するような気がして、SUBARUの血統を感じることができた。
T-3初等練習機のコクピットには誰でも乗ることができる。写真は館内を案内してくれた月舘晋一さん。
T-3練習機のラダーペダルには、富士重工業製品に付けられていた通称「マルフマーク」が刻まれている。
三沢航空科学館の月舘晋一さんに聞くと三沢は1938年に飛行場ができる前から放牧場や海岸が航空機の離発着に利用されていたという。「三沢の海岸の砂には大量の砂鉄が含まれており、飛行機の重量に耐えられたのです」と月舘さんは話す。1931年、二人の米国人パイロットがこの海岸から離陸して人類初の太平洋無着陸横断飛行を成し遂げた。「その記録を達成したのがミス・ビードル号です。館内の“航空ゾーン”ではその復元機を展示し、太平洋無着陸横断飛行をモデルアニメーションで映像化したオリジナル作品を上映しています」三沢航空科学館からクルマで約20分。かつてミス・ビードル号が飛び立った海岸には太平洋を望む展望台が建ち、ミス・ビードル号のレプリカが置かれた“ミス・ビードル号記念広場”がある。高さ23mの展望台に登って太平洋を望むと、小さなプロペラ機でここから飛び立った飛行士の夢と勇気の一端に触れて、胸が熱くなった。
三沢航空科学館の航空ゾーンに展示されたミス・ビードル号(復元機)。
2年前のリニューアルでは航空ゾーン以外に科学ゾーンと宇宙ゾーンが拡充され、体験型の設備が増やされた。
宇宙ゾーンには、はやぶさ2のレプリカや、2018年9月に打ち上げられたH-ⅡBロケット7号機の実物フェアリングなどが展示されている。
ミス・ビードル号記念広場に設置されたミス・ビードル号のレプリカ。すぐそばには太平洋を望むビーチがある。
今月のルート
今月の紹介ポイント
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)年末年始
入館料:一般300円
住所:岩手県二戸郡一戸町岩舘字御所野2
TEL:0195-32-2652(御所野縄文公園は入園無料)
開園時間開館時間:9:00~17:00 (入場は16:30まで)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)12月30日~翌年1月1日
青森県立三沢航空科学館入館料:一般510円
住所:青森県三沢市大字三沢字北山158
TEL:0176-50-7777
※金額はすべて消費税込み。2023年10月現在のものです。
バックナンバー