Touring with SUBARU
彩の国、色巡り
埼玉県行田市~羽生市
埼玉県行田市~羽生市
「彩の国」の愛称を持つ埼玉県。
羊山公園の芝桜や秩父高原のポピーなどの季節を彩る花の色。
大正期に建てられたカラフルな建物の色。鍾乳洞や渓谷の神秘的な自然の色。
歴史を感じさせる織物や染物の色。埼玉県はとてもカラフルだ。
そこで今回は、夏の訪れを感じるこの季節に、夏ならではの色を求めてインプレッサと彩の国へ向かった。
東京からクルマで1時間半ほどのところにある埼玉県行田市は、埼玉北部に位置し、利根川を挟んで群馬県と接している。利根川から水を引くこの地域は田園風景が広がるのどかな場所だ。吹く風も心地良く、どことなく草花の香りがする。
最初に目指したのは「蒼色」。取材時に睡蓮[すいれん]が見頃を迎えていた「古代蓮の里」だ。東北自動車道・羽生ICから西へ走ること約20分。県道364号に入ると、古代蓮の里のシンボル・展望タワーが見えてくる。
園内で見つけた睡蓮は、白やピンク、黄色と様々な色の花を咲かせている。睡蓮という名前は夕方に眠るように花を閉じることからきているが、強い日差しに耐えかねてかまだ昼間だというのに葉の下に隠れるように咲いている花もあった。「睡蓮の他に梅や桜、蓮、蠟梅[ろうばい]などがあり、1年を通して花を楽しむことができるんですよ。園内では蓮が最も多く、42種約12万株の蓮があります」と話してくれたのは古代蓮の里スタッフの吉田兼弘さん。
睡蓮と蓮は同じだと思われがちだが、実は全く異なる。睡蓮と蓮はどちらも抽水植物といって水の底の土や泥に根を張り、水面または水上に葉と花を展開する植物だが、蓮の花は午前中しか咲かず、睡蓮と比べると随分早寝。また、葉や花の位置も異なり、睡蓮は葉や花が水面に浮かんでいるように見えるが、蓮は葉も花も水面より高い位置にある。蓮の花が咲くには季節がまだ早かったが、太陽の方へぐんと伸びた「蒼い」蓮の葉に、強い生命力を感じた。蓮の花が見頃を迎えるのは6月中旬~8月上旬。蓮池一面に蓮の花が咲き乱れるこの時季は古代蓮の里が1年で最も賑わう。「蓮の花と一緒に『田んぼアート』も楽しめるのは7月ですね」と吉田さんが教えてくださった。行田市環境経済部農政課によると、「田んぼアート」とは「行田のおいしいお米や行田の観光地を広めたい」との思いから、平成20年度から始まったもの。図柄に合わせて田んぼに何千本もの杭を打ち、それに沿って異なる種類の稲を植えて、葉の色の違いで絵を作る。古代蓮の里にある展望タワーから眺めると、夏は黒や緑の稲の色がはっきりとし、鮮やかな絵が浮かび上がる。秋にかけて徐々に黄色がかった色に変化し、稲刈り後は絵の背景部分を刈り取ってさらに立体的に。「田んぼアート」は季節の移り変わりとともに変化するアートなのだとか。
今年はラグビー日本代表を応援するものと、「令和」の二つを制作。取材時は田植え前で「田んぼアート」を見ることは叶わなかったが、まだ水を張っていない場所や代搔[しろか]きした場所など、水田の状態はそれぞれで、田植え前のわずかな期間だけ現れる、パッチワークのような風景を見ることができた。
古代蓮の里を出て、のどかな田園風景を西へ10分ほど進むと、水城公園に着く。公園の通りに面した場所には鮮やかな「萌黄色」のなんとも可愛らしい建物があり、公園の花や池の風景と相まって童話の中に迷い込んだようだ。こちらの建物は「Vert Café[ヴェール カフェ]」。カフェの1階には、子どもと一緒でもゆったりできるようにと設置されたキッズスペースがあり、子どもたちの楽しそうな声が聞こえてきてとても賑やか。2階からは公園の気持ちの良い景色が見渡せ、つい長居したくなる。行田産の食材を使用したメニューはどれも気になるが、一番人気という「ゼリーフライピタサンド」を注文する。「ゼリーフライ」とはおからを使ったコロッケで、ソースの効いたどこか懐かしい味がした。昔から行田市民に愛されているB級グルメで、市内に「ゼリーフライ」を提供しているお店は20軒以上あるのだそう。
次に目指したのは、「藍色」。藍染体験を目当てに羽生市にある「武州[ぶしゅう]中島紺屋」へ。羽生や加須[かぞ]、行田など北埼玉では、足袋の産地で、その足袋を染める藍染も共に盛んになった。最盛期には200軒以上の「紺屋[こうや]」(染物屋)があったという。
藍染職人の新島大吾さんにご挨拶し、早速、藍染体験へ。今回は初心者でも簡単にできるハンカチを染めてみることに。布を折ったり輪ゴムを結んだりして模様をつけていく作業は簡単ではあるが、どんな模様になるかは染めるまで分からない難しさと面白さがある。色が染まりやすいように布を水に濡らし、いよいよ染色。藍ガメが並ぶ建物内に漂う独特のつんとするにおいに驚いていると、新島さんが「藍は他の植物と違い水に溶けにくく、発酵させているのでこのようなにおいがするんです。発酵の栄養源としてふすま(小麦の皮の部分)を入れたり、時には日本酒を入れたりもします」と教えてくれた。「藍ガメを毎日かき混ぜます。毎日見ていると次第に調子の良し悪しが分かるようになるんですよ」と話す新島さんは藍染を始めて20年以上。手の爪はかすかに藍色に染まっている。それでも藍染職人としてはまだまだ若手なのだとか。
藍ガメから出してすぐのハンカチは深い緑色だが、広げて空気に触れさせていくと不思議なことに、徐々に濃い藍色になっていく。想像以上に綺麗な模様と色合いで、大満足の仕上がりとなった。
この近くの小学生は社会科見学で、ここで藍染体験をした後に群馬県太田市にあるSUBARUの工場見学へ行くのだそう。SUBARUとの不思議なご縁を感じながらインプレッサへ乗り込む。今度は午前中だけ咲く蓮の花を見に、朝からドライブするのも良さそうだ。蓮の花が見頃を迎える頃には今日とはまた違った田園風景が広がっていることだろうと、次の旅への想像が膨らむ。東京に着く頃には「茜色」の空が広がり、色巡りの旅にふさわしい締めくくりとなった。
今月のルート
今月の紹介ポイント
埼玉県行田市小針2375-1
TEL 048-559-0770
https://www.ikiiki-zaidan.or.jp/kodaihasu/
【公園】
開園時間 終日、年中無休
【古代蓮会館】
[通常期]
開館時間 9:00〜16:30(受付は16:00まで)
休館日 月曜(祝日の場合は営業)、祝日の翌日(土日の場合は営業)、年末年始
[蓮の開花期間(6月中旬~8月上旬)]
開館時間 7:00〜16:30(受付16:00まで)
休館日 なし
埼玉県行田市水城公園2305
TEL 048-556-4330
営業時間 11:00〜16:00
(食事L.O.14:30/デザート・ドリンクL.O.15:30)
定休日 木曜、祝日
http://oshimachicafe.main.jp/
埼玉県羽生市小松223
TEL 048-561-3358(9:00〜17:00)
http://www.izome.jp/
●藍染体験
平日(9:00〜17:00)、要予約
木綿ハンカチ(800円)、シルクショール(2500円)、半袖Tシャツ(2500円)
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