若竹の杜 若山農場では24haの圃場(ほじょう)で10種類以上の竹が栽培されている。寒い季節でも竹が色褪せることはないため、どの季節に訪れても楽しめる。 Photographs●海老根 里実
SUBARU on the Road
新しい季節を迎えに
栃木県宇都宮市
若竹の杜 若山農場では24haの圃場(ほじょう)で10種類以上の竹が栽培されている。寒い季節でも竹が色褪せることはないため、どの季節に訪れても楽しめる。 Photographs●海老根 里実
長い冬の終わりが見え、もうすぐ春がやってくる。新たな季節の気配を感じ、いてもたってもいられない。もういっそ、こちらから春を迎えに行こう。そう思い立った今回の旅は、東京から北へ向かう。なぜなら、都心から程遠くない宇都宮に魅力的な竹林でキャンプを楽しめるスポットがあると聞いたからだ。昨年、発売された新型レガシィ アウトバックに乗り込み、一足先に春を迎える旅へ出る。
百年守られた竹林で、
呼吸を整える
キャンプというと、どんな風景を思い浮かべるだろう。よくあるキャンプ風景といえば、木々の中や開けた野原、あるいは川辺ではないだろうか。しかし、宇都宮市北部にある「若竹の杜 若山農場」では、竹林でキャンプが楽しめるのだ。期待に胸を膨らませつつ、東北自動車道を北上し、宇都宮ICを降りる。日本の郊外らしい町並みを5分ほど走ると、道沿いに竹林がいくつか見える。緑の少ない冬を過ごしてきたからだろうか、鮮やかな緑が目に入ると嬉しく感じる。
青々とした竹林で、オータムグリーン・メタリックのボディが新たな表情を見せる。
※特別に許可を得て撮影を行なっています。通常、車両の立ち入りは禁止されています。
受付でキャンプ用具一式をお借りし、キャンプサイトへ。今回は竹飯盒[はんごう]でお米を炊き、近くの道の駅で購入した地元食材で味噌汁を作る、和風テイストなキャンプ飯を楽しむことにした。竹に囲まれた中で料理とは、きっと人生で何度もない体験だろう。火加減の調節に四苦八苦し、お米は少々固めの炊き上がりに。それでも野菜たっぷりの味噌汁と合わせるには良いだろう。こんな体験もまた味わい深い。竹林の非日常感がスパイスになり、なんてことのない料理でもいっそう美味しく感じる。
キャンプ道具や調理器具一式をレンタルできるため、手ぶらで訪れても十分楽しめる。
竹林の中で栗菓子といただく抹茶は竹の器で。
道の駅で購入したソーセージと里芋の唐揚げ。地元の食材を楽しむのもキャンプの醍醐味だ。
竹で作られた飯盒(はんごう)で、若山農場の竹チップをすき込んだ「竹ノ米」を炊飯する。
道の駅で地元の平飼い卵を購入し、卵かけご飯に。
食後はハンモックテントで食休み。頭上を見上げると、生い茂る竹の葉の隙間から青空が見える。葉の隙間から陽光が漏れ、緑がかった光が降り注ぐ光景は竹林ならでは。更に耳をすませば、竹の葉擦れの音、焚き火が爆ぜる音が聞こえる。優しく揺れるハンモックテントに身を任せていると、自然と呼吸がゆっくりと深まっていくのがわかる。
若山農場は筍や栗の栽培や竹植栽を生業としている農家だ。筍だけでなく竹も栽培している数少ない農家で、手入れされた竹林はテレビCMなどの撮影地としても使用されているのだそう。「百余年に亘り、親子三代で竹と向き合ってきました。竹をもっと身近に感じて欲しいと思い、竹林を開放することにしました」と、三代目の若山太郎さん。キャンプだけでなく竹林散策に訪れる方も多く、今では首都圏を中心に来客が増えているそう。百年の年月をかけて守られてきた歴史ある竹林。自然のエネルギーをもらって、気持ちが明るくなった。
広大な竹林の中に拠点を構える。ハンモックテントの設営は施設スタッフの方が行なうので初心者も安心。
思いの詰まったスイーツ
53年連続生産量が日本一、誰もが知るいちご王国・栃木ではいちごを堪能できるスポットが数多くある。今回、デイキャンプの後に訪れたのは「フルーツダイニング8010(パレット)」。120年以上の歴史を持つ名店だ。栃木県産いちごを使ったサンドイッチ、パフェを始め、スイーツも食事も楽しめる。中でも特徴的なのが、いちごを使ったフルーツサンド。常時、いちごの品種を3、4種類から選べる。今回は「ロイヤルクイーン」「スカイベリー」「とちあいか」を注文し、食べ比べをすることに。しばらくして運ばれてきたサンドイッチの断面のなんと美しいことか。品種で断面に違いがあり、見ているだけでもワクワクする。肝心のお味はというと、濃厚な生クリームといちごの甘み・酸味のバランスが良い。品種それぞれの個性を楽しむことができ、頑張った自分へのご褒美にぴったりだ。せっかくなので王道「とちおとめ」のパフェもいただくことに。フルーツ本来の味を楽しんでもらうため、フルーツ、生クリーム、アイス以外は入っていないのだそう。グラスの中のいちごはクラッシュ状で後味すっきり。爽やかなスイーツが気分な時はこちらもおすすめだ。
3種のいちごのサンドイッチを食べ比べ。運ばれてきたら、まずは品種で異なる断面を楽しんで。
店内はクラシカルで落ち着いた雰囲気。花咲く季節にはテラス席もおすすめ。
お店こだわりのパフェ。
定番とちおとめを堪能したい方にはこちらもおすすめ。
「青果店の創業から120年余、この地に店を構えてからは40年余。フルーツへの思い入れは強いです。お客様にフルーツそのものを楽しんで欲しいという思いでやってきました」と社長の栁田愼治さんは話してくれた。年月をかけて大切なものを守ってきた人々の思いに触れ、お腹も心も満たされる旅の締めくくりとなった。
ちなみに、若竹の杜では4月半ば頃からは筍掘りが楽しめる。また、土日祝日の夜はライトアップも行なわれているので、泊まりでじっくり楽しむのもおすすめ。レガシィ アウトバックの静かな車内にハーマンカードンオーディオから流れる控えめなBGM。竹の葉のそよぐ音が、まだ耳の奥でしているような気がした。
竹灯りが灯る夜は、昼とは違った世界を見ることができる。
※特別に許可を得て撮影を行なっています。通常、車両の立ち入りは禁止されています。
若竹の杜 若山農場~
フルーツダイニング8010(パレット)下戸祭本店
若竹の杜 若山農場
栃木県宇都宮市宝木本町2018
TEL:028-665-1417
営業時間 平日:9:00~17:00(日中)
土・日・祝日:9:00~20:00(日中・竹林ライトアップ)※閉園時間は季節により異なります ※最終受付は閉園時間の30分前となります
定休日 年末年始、他は不定休
https://www.wakayamafarm.com/
フルーツダイニング8010(パレット)下戸祭本店
栃木県宇都宮市下戸祭2-18-1
TEL:028-621-8020
営業時間 11:00~18:00
定休日 不定休
https://8010-pallet.com/
注)新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため、営業時間・営業内容に変更が生じる場合があります。事前に各スポットへお問い合わせください。
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