Touring with SUBARU
フェリーがつなぐ、
日本の中のアメリカ
神奈川県横須賀市〜千葉県袖ケ浦市
神奈川県横須賀市〜千葉県袖ケ浦市
めまぐるしい日々の中で、ふと異国の雰囲気を味わいたくなることがある。実際に海外へ行けなくても、クルマでアクセスできる国内のスポットでそれを感じてみたい。せっかく異国情緒を感じに行くのなら、いつもと少し違う旅にしたい。そんなことを考えていたとき、関東近郊でもフェリーの旅が愉しめることを思い出した。
今回は、神奈川県と千葉県をフェリーでつなぎ、文化に、歴史に、そして雰囲気にアメリカの薫りがするスポットをめぐってみることにした。
まず向かったのは横須賀のどぶ板通り。近くの米軍基地から多くアメリカ人が訪れることもあり、日本とアメリカが交じり合う独特な雰囲気の場所だ。相棒に選んだアイスシルバー・メタリックのインプレッサは、オプション装着されたSTIエアロパーツも相まって、その街並みの中でも存在感が際立っていた。
ヨコスカのジャンパーに由来する「スカジャン」は、実はどぶ板通りが発祥の地。1947年創業の「プリンス商会」店主、渡辺栄子さんは「米軍兵の方が刺繍をやっていた父に頼んできたの」と誕生のきっかけを語ってくれた。ジャンパーに刺繍を、と注文を受けたお父様は絹製のパラシュートで綺麗に補修し、鷹・虎・龍を刺繍。それが口コミで広がったのだそう。店頭に希望の一着があればすぐに手に入るが、基本はオーダーメイド。今や海外から注文しに来る人もいるほどで、製作が追いつかず完成まで半年待ちとのこと。アメリカの文化と日本の技術や感性を組み合わせたスカジャンは、和洋折衷の得意な日本人らしい一品として、世界中から注目されているようだ。
どぶ板通りからクルマで約40分、フェリー乗り場のある久里浜港に到着した。乗船する前に、港から歩いて5分少々の、ペリー上陸の記念碑を有する「ペリー公園」へ。この碑は、艦隊の一員としてペリーと共に日本へ訪れたビアズリー退役海軍少将の呼びかけで1901年に建てられたもの。アメリカ海軍の提督であったペリーは、日本の開国を求め1853年に久里浜海岸へ来訪。公園内の「ペリー記念館」では当時を伝える資料が展示され、ガイドによる解説も受けられる。日米関係のはじまりにふれながら、激動の時代に想いを馳せた。
そろそろお腹も空いてきた頃、と久里浜港のフェリーターミナルへ戻り、昼食をとることに。フードコート「コーラル」では横須賀のご当地グルメ「よこすか海軍カレー」を提供している。これは1908年発行の「海軍割烹術参考書」にある日本海軍のレシピを再現した、認定された店舗でしか食べられないメニュー。懐かしさを感じるスパイシーなカレーと、それを優しく包み込む牛乳の組み合わせに舌鼓を打った。
乗船が始まったのは、フェリー出航の15分前。他の乗客やクルマが次々に船内へと吸い込まれていき、インプレッサも後に続く。車内での待機はできないため、デッキで三浦半島を眺めながら、出航の時を迎えた。フェリーが動き出し、視線を前方へ向ければ徐々に房総半島が大きくなってくる。金谷港へ近づくにつれ、久里浜とはまるで違う景色が広がっていることに驚かされた。そのギャップは、徐々に情景が変わっていくクルマでの旅に対し、まるでワープするように点と点をつなぐフェリーだからこそ得られるものなのかもしれない。
およそ40分の船旅を終え、鋸山の麓、金谷港から南房総方面へクルマを走らせる。国道127号「内房なぎさライン」を進むにつれ、目の前に海沿いの景色が広がってくる。窓から吹き込む潮風は心地よく、いつまでも走っていたい気分にさせる。時折出くわす狭い道でも、広い視界と小回りの良さでボディの大きさを感じさせず、扱いに困ることはない。
館山まで行ったあたりでそろそろ小休止をしよう、と立ち寄ったのは「須藤牧場 アイスカフェCOWBOY」。牧場に併設されているこのカフェでは、牛やヤギ、ウサギや猫など様々な動物を眺めながらのんびりとした時間を過ごすことができる。ワシントン州の牧場で修業を重ねたご主人の須藤裕紀さんの意向もあり、その店構えはどことなくアメリカン。「ドライブやツーリングの途中で寄ってくださる方も多いんです」と語るのは女将の須藤陽子さん。一番人気は牧場で採れたばかりの牛乳にソフトクリームを乗せた「ミルキーソフト」。濃厚ながら後味はすっきりで、ドライブ中の休憩にはもってこいだ。気づけばカレーでもデザートでも牛乳となってしまったが、須藤さんによれば6月1日は「世界牛乳の日」で、6月は「牛乳月間」なのだそう。その偶然の一致はまさに嬉しい誤算だった。
1日南房総での走りを愉しみ、翌朝は旅の締めくくりとして袖ケ浦へ。まるでアメリカ西海岸のような場所があると聞き、今回のゴールとすることにした。それは、「チバフォルニア」と呼ばれる、東京湾アクアライン 木更津金田インターから程近い片側2車線の一般道。海沿いに連なるヤシの木を横目に走れば、日本に居ながらにしてカリフォルニア気分を味わえると多くの人が訪れるスポットだ。
現地に到着してまず目に飛び込んでくるのは、ヤシの木がはるか先まで立ち並ぶ姿。道はブレずに一直線が続き、視界いっぱいに広がる風景に余計なものは何もない。あまりに非日常的な光景で、走っていてここが日本ではないような感覚に陥るほど。噂通り、西海岸の景色を切り取ったような佇まいがそこにはあった。
はたして、天候や湿度も違う本場カリフォルニアではどのような情景と出会えるのだろうか。同じように見えることもあれば、全く違うシーンを映し出すのかもしれない。異国の地について思いを巡らせながら、充実感とともに帰路についた。
今月のルート
今月の紹介ポイント
神奈川県横須賀市本町2-4
TEL 046-822-3907
営業時間:11:00〜18:00
定休日:水曜日
神奈川県横須賀市久里浜7-14
TEL 046-834-7531
開館時間:9:00〜16:30
休館日:月曜日(休日の場合翌日)、年末年始
〈久里浜港〉
神奈川県横須賀市久里浜8-17-20
TEL 046-835-8855
〈フードコート コーラル〉
営業時間
平日:5:30〜14:00
土休日:5:30〜15:00
〈金谷港〉
千葉県富津市金谷4303
TEL 0439-69-2111
http://www.tokyowanferry.com/
千葉県館山市安東337
TEL 0470-22-9732
営業時間:10:00〜17:00
定休日:火、水曜日
http://www.sudo-farm.com/about-2/cowboy/
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