カートピア1月号 TOURING With SUBARU

福西本店の店蔵前に停車するレヴォーグ。クリスタルホワイト・パールのボディが、黒と赤茶が織りなす外観によく映える。
*あいばせ…会津の方言で、「さあ、行きましょう」の意味。

Touring with SUBARU

歴史と伝統が紡ぐ町へ
「あいばせ!

福島県会津若松市

福西本店の店蔵前に停車するレヴォーグ。クリスタルホワイト・パールのボディが、黒と赤茶が織りなす外観によく映える。
*あいばせ…会津の方言で、「さあ、行きましょう」の意味。

会津若松市は東北の玄関口に位置し、戦国武将の蒲生氏郷[がもううじさと]によって整備された歴史ある町。文化遺産や伝統工芸が素晴らしいほか、周辺には猪苗代湖や磐梯山[ばんだいさん]があり、四季折々に表情を変える豊かな自然も満喫できる。今月はそんな会津若松の歴史文化を感じるべく、“まちなか歩き”ならぬ、“まちなかドライブ”に出ることにした。

激動の時代を生き抜いて


戊辰戦争など幕末動乱の舞台となった会津若松。今なお点在する史跡や名所が、当時の面影を残している。まずは市街地を一望できる飯盛山[いいもりやま]を目指し、今月のパートナーであるレヴォーグSTI Sport EyeSight Black Selectionを走らせた。

明治初期の神仏分離令で廃寺となった会津さざえ堂。以降は観音像に代わって、会津藩の道徳教本である「皇朝二十四孝」の絵額が掲げられている。

明治初期の神仏分離令で廃寺となった会津さざえ堂。以降は観音像に代わって、会津藩の道徳教本である「皇朝二十四孝」の絵額が掲げられている。

江戸時代の巡礼ブームにともない、上りと下りで合理的に参拝できるよう設計されたというさざえ堂のスロープ。 滑り止めの付いた斜面が、DNAと同じ二重らせん状に続いている。

江戸時代の巡礼ブームにともない、上りと下りで合理的に参拝できるよう設計されたというさざえ堂のスロープ。 滑り止めの付いた斜面が、DNAと同じ二重らせん状に続いている。

白虎隊士が眠る場所としてその名を広く知られている飯盛山。実は白虎隊の悲劇が起こるより前の、江戸後期に六角三層の巡礼観音堂が建立されていた。世界に例を見ない二重らせん構造の建築様式を誇る堂は、その見た目から「会津さざえ堂(正式名称は円通三匝堂[えんつうさんそうどう])」と称される。駐車場でクルマを降りると、落葉した木々の梢からさざえ堂の上層部が覗いていた。鳥居をくぐって進み、30段ほど石段を上ると、堂の正面に出る。何とも不思議な木造建築。その造形美に圧倒された。傾いているように見えるのは目の錯覚だという。正面から右回りにらせん状のスロープを上り、頂上に到達すると左回りの下りスロープで背面の出口に通じた。複雑な構造を理解しようと何度か回ってみたが、謎は深まるばかり。江戸時代から息づく建築技術に改めて感服した。

飯盛山を後にして市街地へレヴォーグで進むこと約10分。鶴ヶ城下に広がる通りは、城下町特有の屈折した十字路が目立つ。これは城を守るための遠見遮断[とおみしゃだん]や、地形を利用した生活用水の分水が関係している。人通りもある珍しい道形[みちなり]を、フロント視界の広いレヴォーグで十分に注意しながら進む。かつて特権商人が居住した由緒ある一之町通りに差し掛かると、黒漆喰となまこ壁の店蔵が異彩を放っていた。

鈴木屋利兵衛にて、店主の鈴木万里子さんに教わった漆玉のストラップ作り。補色を意識してコーディネートするのがポイント。店内には、戊辰戦争時についた刀の試し切り痕が今も残っている。
漆玉のビーズを使ったストラップ作り
漆玉のビーズを使ったストラップ作り

鈴木屋利兵衛にて、店主の鈴木万里子さんに教わった漆玉のストラップ作り。補色を意識してコーディネートするのがポイント。
店内には、戊辰戦争時についた刀の試し切り痕が今も残っている。

ここは、江戸後期創業の会津漆器の老舗「鈴木屋利兵衛[すずきやりへえ]」。戊辰戦争では官軍の屯所[とんしょ]にもなったという長い歴史をもつ店内で、漆玉のビーズを使ったストラップ作りを体験することにした。「まずは好きな色の紐とビーズを選んでください」と店主の鈴木万里子さん。漆玉は専属職人が丹念に仕上げたものだそう。紐の両端を合わせてビーズへ通すことに苦戦しながらも、15分ほどでオンリーワンのストラップが完成した。手作りの良さは、形だけでなく心にも深く残ること。会津に根付く伝統工芸の一端を垣間見たような気持ちがした。

ノスタルジック街道に
心を浸して


會津壹番館の蔵造り洋館は、かつて第六十銀行若松支店として建てられたのが始まり。その後に会陽医院を経て、現在の喫茶店にリノベーションされた。

會津壹番館の蔵造り洋館は、かつて第六十銀行若松支店として建てられたのが始まり。その後に会陽医院を経て、現在の喫茶店にリノベーションされた。

自家焙煎のコーヒーとカボチャプリンのセット

続いて向かったのは、煉瓦[れんが]敷きのレトロな野口英世青春通り。その名の通り、現在千円紙幣の顔として知られる医学者野口英世が青春時代に歩いた道だ。英世が医学を志すきっかけとなった、左手の火傷手術を受けた旧会陽医院[かいよういいん]の建物は当時のまま現存する。二階は資料館に、一階は「會津壹番館[あいづいちばんかん]」という喫茶店になっている。一休みをするため、店前の駐車スペースにクルマを駐めて店内に足を運んだ。吊り下げランプなどのアンティーク家具に彩られた空間で、スローなジャズとともに優雅な時間が流れる。自家焙煎のコーヒーとカボチャプリンのセットを注文した。淹れたてのコーヒーは香り豊かで冷えた体に染みわたる。英世モチーフのオリジナルカップが愛らしい。昔ながらの固めのプリンの弾力と食感を味わった。

福西本店 座敷蔵
福西本店 庭園

福西家の歴代当主が住んだ贅沢な座敷蔵と四季を映す庭園。当主の長寿を願い、高砂の絵が部屋中に飾られている。

壹番館に隣接する商家建築の「福西本店」も、赤瓦の屋根と黒漆喰の外壁が立派だ。重厚な雰囲気に吸い込まれるようにして、敷地内にお邪魔した。来客をもてなす際に使われた座敷蔵には、奥行きを感じさせる飾り襖など蔵特有の工夫が施されていた。粋な意匠に感性がくすぐられる。戦国武将蒲生氏郷[がもううじさと]の産業振興によって発展した会津。会津とともに繁栄した福西家は、明治後期から昭和初期にかけて三世代で、六棟の蔵と母屋、数奇屋、さらに庭園を築いた。商売繁盛の秘訣は、長生き・健康・働き者の三拍子だったという。豪商の家は商業文化施設となってもなお、往時の威勢や財力を今に伝えていた。

黙々と絵付けをする山田賢治さん
起き上がり小法師

正月の初市では子孫繁栄を祈願して家族の数よりひとつ多く買う習わしの「起き上がり小法師」。山田民芸工房では5代目の山田賢治さんを筆頭に、親子3人で年間約3万個の小法師を作る。

黒光る軒並みを背に、走り出したレヴォーグ。大きなボディにもかかわらず小回りが利くため、まちなかも安心して運転できる。年季の入った煉瓦道は、通るたびにカタカタと音を奏でた。次に訪れたのは、「起き上がり小法師[こぼうし]」という民芸品を手作りで守り続ける「山田民芸工房」だ。倒しても起き上がる縁起物として愛される小法師もまた、氏郷が生活の糧となるよう武士に作らせたのがルーツだそう。工房で黙々と絵付けをする山田賢治さんの指先には、熟練の技が光っていた。山田さんの作る小法師は十人十色の表情で、温かみと優しさがある。親指サイズの顔色をひとつずつうかがい、土産選びを愉しんだ。

レヴォーグで情緒あふれる町並みを駆け抜けていると、まるで別の時代にタイムスリップしたかのような気分になる。

レヴォーグで情緒あふれる町並みを駆け抜けていると、まるで別の時代にタイムスリップしたかのような気分になる。

工房を出て、猪苗代湖方面に行ってみようかと車内で考える。その助手席には、おとぼけ顔の小法師が行儀よく座っていた。

今月のルート


会津さざえ堂(円通三匝堂)〜
鈴木屋利兵衛〜
會津壹番館〜
福西本店母屋〜
山田民芸工房〜
猪苗代湖

今月の紹介ポイント


会津さざえ堂

福島県会津若松市一箕町八幡滝沢155
TEL 0242-22-3163
拝観時間:9:00~16:00(4月~11月は8:15~日没) ※無休
拝観料:大人400円、大学・高校生300円、小・中学生200円
http://www.sazaedo.jp/

会津漆器 鈴木屋利兵衛

福島県会津若松市大町1-9-3
TEL 0242-22-0151
営業時間:10:00~18:00 ※不定休
http://www.suzukiyarihei.com/

蔵造り茶館 會津壹番館

福島県会津若松市中町4-18
TEL 0242-27-3750
営業時間:8:00~20:00 ※無休
http://www.uyou.gr.jp/aizu-ichibankan/

福西本店

福島県会津若松市中町4-16
TEL 090-9422-2924(母屋)
開館時間:10:00~17:00(冬期は~16:00)※不定休
入場料:大人300円、中高生200円、小学生100円
http://www.fukunishi-honten.jp/

山田民芸工房

福島県会津若松市七日町12-35
TEL 0242-23-1465
営業時間:8:00~19:00 ※不定休

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