第二次世界大戦後の区画整理でできた、環状3号線の一部として整備された播磨坂。当時約150本の桜が植えられ今では都内随一の桜の名所に。新緑も美しい。
Photographs●小川宏子 Text●塩田典子
SUBARU on the Road
下町と山の手を結ぶ
坂の町をたずねて
東京都文京区
第二次世界大戦後の区画整理でできた、環状3号線の一部として整備された播磨坂。当時約150本の桜が植えられ今では都内随一の桜の名所に。新緑も美しい。
Photographs●小川宏子 Text●塩田典子
5つの台地といくつもの谷が入り組んだ東京都文京区は名のつく坂だけでも113カ所ある、都内きっての坂の町。明治期には多くの文豪も居を構えた歴史の薫る坂道をクールグレーカーキのSUBARU XV Advanceで巡ることに。
時折クルマから下りては、路地裏や階段坂に迷い込み、そこに暮らす人々の日常を目に焼き付けた。
由緒ある名の坂道を
クルマときどき徒歩で
東京23区の真ん中、武蔵野台地の東端にある文京区は、縄文時代の末期頃から海水が後退し、川によって浸食された谷が刻まれることから、多くの坂道が網目のように巡っている。播磨坂[はりまざか]、鐙坂[あぶみざか]、菊坂[きくざか]など風雅な名前もさることながら地域の歴史を汲んだその由来にも興味が湧く。
富坂から絶叫マシーンを望む。
SUBARU XVに乗り込んでまず訪れたのは、桜並木が見頃を終えたばかりの小石川「播磨坂」。当地にあった松平播磨守[まつだいら はりまのかみ]の上屋敷にちなんで命名されたこちらは中央に緑道が整備され、緩やかな傾斜とカーブに身を委ねると萌黄色[もえぎいろ]の新緑が目に優しく降り注ぐ。春日通りを東に進むと突如、目の前に後楽園のジェットコースターが現れた。ビル群の間から顔を出すこんな風景も東京ならでは。ここ「富坂[とみさか]」南側の後楽園周辺には江戸時代、水戸藩上屋敷があったという。鳶[とび]が多くいたことから鳶坂といわれ、のちに富坂に転じたという説も。
根津神社の石垣越しに境内の緑が映える新坂(S坂)。
文京区内には全4カ所の新坂がある。
道幅のある環状道路の坂道から谷間や高台の細い坂に移動すると、クルマの性能をより実感できた。根津神社の脇を通る「新坂[しんざか]」(S坂)はS字カーブの勾配ある坂で、森鷗外の小説『青年』に登場する。また音羽の「鷺坂[さぎざか]」はかつて下総関宿藩[しもうさ せきやどはん]の江戸屋敷のあった場所。昔ながらの石積みが風情を感じさせるが、急斜面で鋭角なV字を描き通行が難しい。モーターとバッテリーをシンメトリカルAWDに統合したe-BOXERは、アクセルを踏んだ瞬間からモーターならではの力強いトルクが得られるので、このような場面でも落ち着いてクルマをコントロールできる。
傾斜が急で切り返しの必要な鷺坂[さぎざか]。
クルマ1台がようやく通れる道幅なので進入には注意を。
東京大学のお膝元、本郷ではクルマで入れない細い坂や階段坂を散策することに。この辺りは樋口一葉、森鷗外など多くの文豪が暮らしたところ。震災や東京大空襲を免れたことから木造の建物や町割りが残されている。本郷通りから西片台地へ緩やかに延びる「菊坂」には、明治初期創業の「旧伊勢屋質店」が。菊坂下道で3年ほど暮らした樋口一葉が通った質店で、週末のみ内部公開される。菊坂下道には一葉の旧居跡もあり、ゆかりの井戸も残されている。まるでここだけ時が止まったかのような空間で、この地から名作の数々が生まれたのかと思うと感慨深かった。菊坂下道から本郷台地へ急階段が続く「炭団坂[たどんざか]」を上り切ると、眼下に本郷の古い街並みが広がる。坂上には坪内逍遙[つぼうち しょうよう]や正岡子規も暮らしたとか。坂道を上り下りしながら、もうしばらく路地を彷徨[さまよ]ってみよう。
今も人々が暮らす樋口一葉旧居跡と井戸にて。
炭団坂[たどんざか]という名前は炭団(炭の粉を用いた燃料)を商売にする者が多かったとか、急坂で転び落ちた者がいたことに由来するという。
文豪ゆかりの本郷で
出会ったとっておき
金魚坂
(吉田晴亮[せいすけ]商店)
東京都文京区本郷5-3-15
TEL 03-3815-7088
営業時間:11:30〜21:30(喫茶21:00LO)、土日祝11:30〜20:00(喫茶19:30LO)
※金魚釣りは11:30〜18:00
定休日:月曜、第3火曜(祝日の場合は翌日)、12/30〜1/4
http://www.kingyozaka.com
この地で350年続く金魚の卸問屋。江戸時代は加賀藩の下屋敷、明治時代は花柳界に卸していたといい、現在はらんちゅう、和金など約50種・5万匹を水量約50トンの人工池で飼育・販売している。ユニークなのが釣り堀で金魚釣りが体験できること。練りエサを鈎[はり]につけて釣り糸を垂らしたら、金魚がエサを吸い込む瞬間にエイッと釣り上げて。土・日・祝と春・夏休みには金魚すくいも開催。喫茶店・金魚坂も併設するのでランチやお茶でひと休みも。
金魚釣りは大人30分700円、金魚すくいはポイ1枚200円〜。
釣り堀には錦鯉も泳いでいるから驚く!
石井いり豆店
東京都文京区西片1-2-7
TEL 03-3811-2457 営業時間:9:30~19:00 定休日:日曜、祝日
菊坂下近くで明治20年(1887)創業。現在は四・五代目が昔ながらの製法で1日に数回落花生や大豆を煎り、煎りたてが並ぶ。「温度、湿度、豆の状態によって煎り加減を測るのが難しい」と五代目の石井雄貴さん。直火で煎るから香ばしい匂いが立ち上り、風味よく仕上がる。砂糖がけした落花糖は夏目漱石のお気に入りだったとか。懐かしさあふれる店先にはご近所さんや常連さんがひっきりなしに訪れ、下町風情に心温まる。
千葉県産素煎落花生
180g 900円、
千葉県産落花糖
180g 950円。
東京大学コミュニケーションセンター
東京都文京区本郷7-3-1
(本郷キャンパス内 赤門北隣)
東京大学のオフィシャルショップ。大学での研究成果を活用した商品は化粧品、サプリメント、文具など多岐にわたる。アミノ酸とビタミン10種、エネルギー100kcalを同時に摂取できる「体力式®︎アミノ酸ゼリー」(1個160円)は根強い人気。セルロースナノファイバー配合のゲルインクを使った「UTokyo Go」のボールペン(1本380円)は書き味スラスラ。東京大学所蔵資料『本郷湯島絵図』をデザインした「超撥水風呂敷」は濡れたものも包める優れモノ。
1853年頃の本郷湯島絵図1020円と超撥水風呂敷3600円。
風呂敷はバッグにアレンジもOK。
注)新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため、営業時間・営業内容に変更が生じる場合があります。
・ 取材においては十分な感染予防対策を講じて行なっております。
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