ここは東京都三鷹市にある国立天文台。今から60年前、富士重工業のデザイナーがここで(当時は東京大学東京天文台)働いていた香西洋樹さんの元を訪ねてきた。“スバル”の名を冠する新開発した軽自動車のエンブレムを作るにあたり、星の専門家である香西さんにアドバイスを求めてきたのである。
今月は、新型インプレッサスポーツ2.0i-SアイサイトでSUBARUという名称と六連星をモチーフにしたエンブレムのルーツに触れる旅に出かけた。
ハワイのすばる、沖縄のむりかぶし。
六連星に導かれたSUBARUと天文台との不思議な縁
(東京都三鷹市)
© NAOJ
ハワイのすばる望遠鏡 Subaru Telescope/「すばる」の名は1991年公募により決定しました。
国登録有形文化財の国立天文台表門に迎えに来てくださったのは、専門研究職員の臼田-佐藤功美子さん。数年前までハワイ島にある国立天文台ハワイ観測所で働いていたという。マウナケア山頂には、口径8・2メートルの大型光学赤外線望遠鏡“すばる望遠鏡"があった。今回はその1/50サイズの模型の前でお話を聞いた。すばる望遠鏡はWRブルーとそっくりの鮮やかなブルーだ。「青い鏡筒の望遠鏡というのは珍しいのですよ」と、臼田-佐藤さん。
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三鷹の4D2U(4次元デジタル宇宙)ドームシアター/https://prc.nao.ac.jp/4d2u/
国立天文台専門研究職員臼田-佐藤功美子さん。後方にあるのがすばる望遠鏡模型。
「ハワイ観測所で働いていた頃、地元ハワイの方々から“この望遠鏡はクルマのカンパニーが造ったのか?"と尋ねられました。そうではなくスバルというのは日本で昔から親しまれてきたプレアデス星団の和名だとご説明すると、あのエンブレムはプレアデス星団なのかと納得されていたようです。そのエンブレムをデザインするときにアドバイスしたのが、三鷹の天文台に居た香西さんだというのも何かの縁を感じますね」
臼田-佐藤さんは初期のSUBARUエンブレムと実際のすばるの写真とを比べながら、一番明るい星がアルキオネ、その左下にあるのがアトラス…と説明してくれた。すべての星が、実際の星と同じ位置に配置されていて、当時のデザイナーの熱意が伝わって来る。
「プレアデス星団は若い星々の集まりで、双眼鏡や望遠鏡を使うと小さな星々がたくさん見えます。その中で特に明るい星が6つ〜7つ見えます。夜空でも特に目に付く明るい星団は世界各地で親しまれており、ハワイではマカリィ、沖縄ではむりかぶしと呼ばれています。実は石垣島天文台の105㎝光学赤外線望遠鏡には“むりかぶし望遠鏡"という名前が付けられているんですよ」
そう聞くと是非どちらも訪ねてみたくなってくる。特に標高4205メートルの場所にあり、四輪駆動車でなければたどり着けないというハワイのすばる望遠鏡には、いつかSUBARUのAWDで訪ねてみたいと思った。
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SUBARU・STIギャラリー/国立天文台から北の方角にクルマで2分、CAR DO SUBARU三鷹の2階にあるギャラリー。
歴代SUBARU車のフロントグリルを常設展示し、六連星エンブレムの変遷をたどることができる。
名称とエンブレムに込められた
先人たちの熱い思いに触れる
(群馬県太田市・伊勢崎市)
中島飛行機時代から続くSUBARUの旧社屋と新社屋
初めてSUBARUの名を冠したクルマを見に、群馬県太田市にあるSUBARUビジターセンターを訪ねた。明灰色のセダンP-1。直列4気筒1500ccエンジンをフロントに搭載した定員6名のFRセダンで富士重工業が初めて造った乗用車だ。ボディは航空機技術を応用したフル・モノコック構造で、軽量化と耐久性を追求していた。1954年2月に試作1号車が完成し走行試験を始め、合計20台が製作されたが量産には至らなかった。
SUBARUビジターセンター/スバルの歴代のクルマや
個性的な技術、安全への取り組みなどを紹介しています。
筆記体の“subaru"の文字
ボディを良く見るとエンジンフードの両サイドとリヤゲートに筆記体で“subaru"の文字が刻まれている(写真上)。この名称は、乗用車部門への進出に並々ならぬ熱意を抱いていた富士重工業の初代社長、北謙治が命名したものだ。1953年7月に設立した富士重工業は、2年後の1955年4月1日、富士工業、富士自動車工業、大宮富士工業、宇都宮車輛、東京富士産業の5社を吸収合併して新たなスタートを切った。
スバル360開発時に作った石こう型
「すばる」とは牡牛座の散開星団を指す日本語の名称で、もともとは「御統(みすまる)」と呼ばれていたのが、「統まる(すまる)」→「すばる」に変化したと言われている。「すばる」という名称には6社が互いに結束・融合し、大成するという願いもこめられていたのである。
こうして完成したエンブレムを冠したSUBARU初の量産車スバル360は、1958年3月3日にお披露目された。このスバル360の開発が行なわれたのが伊勢崎製作所第二工場だ。現在、この場所には「スバル360誕生の地」のモニュメントとして、かつての工場の東側壁面が移築保存されている。
インプレッサスポーツ 2.0 i-S EyeSight アイスシルバー・メタリックと
スバル360の開発・生産拠点の跡地
伊勢屋/SUBARU郡馬製作所の目の前に店を構えている、1934年創業の和菓子屋さん。1961年には、スバル360をの形をしたスバル最中を販売。
伊勢屋の社長岡田喜浩さん。
今月のルート
国立天文台三鷹(本部)〜SUBARU・STIギャラリー
〜SUBARUビジターセンター〜伊勢屋〜スバル360発祥の地(とりせん平和町店)
2024年02月号
ダイナミックな風景の中へ。九州冬の旅
2024年01月号
新潟文学紀行 〜川端康成『雪国』の面影を辿る〜
2023年12月号
水の織りなす美景をもとめて
2023年11月号
SUBARU BRZで訪ねる夢とロマンに触れる旅
2023年10月号
食と自然を愉しむ、秋の満腹ドライブ
2023年09月号
淡路島西海岸サンセットクルージング
2023年08月号
日本の原風景をたどり、盛夏の緑に包まれる
2023年07月号
人々が守り続けた文化と自然が生む絶景
2023年06月号
涼やかなグリーンを求めて
2023年05月号
春を告げる花と富山湾の恵みを探して
2023年04月号
自然とアートを巡るショートトリップ
2023年03月号
つむがれ、受け継がれていく歴史の道をなぞる
2023年02月号
暮らしが生み出す光の絶景
2023年01月号
古人の歩んだ道と、見上げた空と時代の面影を追いかけて
2022年12月号
旬のごちそうを求めて冬の安芸へ
2022年11月号
四国遍路~1200年以上続く、祈りの旅路を行く
2022年10月号
絶景&美食を堪能する三陸の秋
2022年09月号
東名・新東名SA&PA寄り道ツーリング
2022年08月号
夏をほおばる!
2022年07月号
Tribute to the original cartopia 50年目の“佳いところ”を訪ねて
2022年06月号
文豪も通った、情緒あふれる峠道をゆく
2022年04月号
空と陸の交通ミュージアムを巡る旅
2022年03月号
新しい季節を迎えに
2022年02月号
SUBAROAD体験ルポ『動き続ける伊豆半島〜2,000万年の歴史を走る』の旅へ
2022年01月号
SUBARUがお届けする、まったく新しいドライブ体験SUBAROAD始めました。
2021年12月号
ノスタルジーに浸る、埼玉レトロ旅
2021年10月号
カートピアスタッフおすすめ
グルメ&スイーツ特集
2021年09月号
“走り”を愉しむ旅
2021年08月号
海と山、自然の恵みを味わう
2021年07月号
あの日の夏景色
2021年06月号
煌めく新緑につつまれて
2021年05月号
下町と山の手を結ぶ坂の町をたずねて
2021年04月号
SUBARUで走りたい
絶景のツーリングスポットセレクション
2021年03月号
SONGS on the Road 〜あの時のBGM
2021年02月号
煌めくフルーツラインと彩甲斐街道冬の旅
2021年01月号
身も心もうるおう冬の温泉郷へ
2020年12月号
39年目の八溝山へ、再び
2020年11月号
深まる秋を探しに上州の絶景ラインを行く
2020年10月号
絶景&ご当地の逸品に心躍る!〜中央道SA・PA寄り道ツーリング
2020年09月号
埼玉にある異国を旅する
2020年08月号
夏を感じる。湘南〜西湘ビーチライン
2020年05月号
春と夏の合間で
2020年04月号
春薫る、国東半島から姫島へ
2020年03月号
命の故郷に身を浸して
2020年02月号
氷と雪の織りなす美景を訪ねて
2020年01月号
歴史と伝統が紡ぐ町へ「あいばせ!」
2019年12月号
京町家の宿に住まうように旅する
2019年11月号
この地に受け継がれる
ものづくりの明日を探して
2019年10月号
初秋の魚沼美景を覗く
2019年09月号
山岳絶景と走りを堪能し、古の宿場町へ
2019年08月号
神々が宿る島でパワーチャージ
2019年07月号
彩の国、色巡り
2019年06月号
カミツレの里で、暮らしを見直すビオツーリズム
2019年05月号
海の碧、空の青、川の蒼-土佐の水辺を旅する
2019年04月号
SUBARU BRZで走り抜ける、早春の伊豆半島
2019年03月号
今見たい夜景を巡る
北九州ナイトクルージング
2019年02月号
自然と文化が息づく島根
器めぐりの旅
2019年01月号
思い出とカタチに残る旅
福井ハンドメイド・ツーリング
2018年12月号
ラグーンブルー・パールに誘われて
2018年11月号
森林の宝庫・山梨でヒーリングドライブ
2018年10月号
読書の秋。旅を通じて本との出会いを愉しむ
2018年09月号
再び輝き始めた宮城・沿岸の町へ
2018年08月号
SUBARU XVでたっぷり走る夏の北海道
2018年07月号
茶摘み体験からはじまるお茶づくしドライブ
2018年06月号
フェリーがつなぐ、日本の中のアメリカ
2018年05月号
西海岸の美景ロードを走り異文化が交わる場所へ
2018年04月号
絶景と伝統文化にふれる春色ツーリング
2018年03月号
美しい稜線が連なる山里で春の気配と大地の記憶に出会う
2018年02月号
ふるくてあたらしい、蔵の街で春を待つ
2018年01月号
安全で愉しいドライブを祈る、新春ツーリング
2017年12月号
SUBARU XV 東京タワーめぐり
2017年11月号
WRX STI 秋色探しツーリング
2017年10月号
やわらかく五感をひらく、秋。富山アートめぐり
2017年9月号
高原の涼気と、樹の香にひたる
2017年8月号
2017 Summer HIGHLAND EXPRESS
2017年7月号
豊かな水の恵みが育んだ、ここだけの味を訪ねて
2017年6月号
雨空をたたえて、こけを愛でる
2017年5月号
花と香りをめぐる旅
2017年4月号
スバルのルーツを辿る旅
2017年3月号
暮らしに溶け込む器〜波佐見で春色さがし
2017年2月号
かやぶきの里のアクティブレスト
2017年1月号
首都圏夜景の名所ツーリング
2016年12月号
日本の国石 翡翠に誘われて
2016年11月号
天気と季節の境目にて
2016年10月号
水のある絶景を求めて