江田島市の大原湾沿いを走るインプレッサ STI Sport。右手後方に見えるのは大黒神島。 Photographs●小川 宏子
SUBARU on the Road
旬のごちそうを求めて
冬の安芸へ
広島県廿日市市~江田島市~広島市
江田島市の大原湾沿いを走るインプレッサ STI Sport。右手後方に見えるのは大黒神島。 Photographs●小川 宏子
冬の味覚のひとつであるかき。かきは「海のミルク」と呼ばれるほど栄養価が高く、クリーミーな味わいが特徴だ。かきの生産量日本一を誇る広島県では、独自の条例を定めるなど食品衛生上の安全対策に力を入れており、そのおいしさはもちろん、安全性の高さも人気の秘密。寒さが厳しくなるこれからの時期に旬を迎える「海のミルク」を味わい尽くそうと、かきの主要産地である広島湾周辺を目指し、アイスシルバー・メタリックのインプレッサ STI Sportに乗り込んだ。
早起きしていただく、
贅沢な朝ごはん
かきの主要産地である広島湾は島や岬に囲まれているため波が穏やかだ。さらに中国山地を源とする太田川などの河川が流れ込むことで天然の栄養分が運ばれるため、かきの生育に最適な環境が整っている。「海のミルク」を堪能するにはぴったりの場所だ。
JR山陽本線の阿品駅近くの丘からは、海に浮かぶかき筏や厳島を望むことができる。
広島岩国道路の廿日市ICを下りて国道2号を山口方面へ10分ほど走ると、最初の目的地である「島田水産」に到着する。島田水産は創業300年以上のかき養殖の老舗で、かきの生産・加工だけでなく、新鮮なかきをその場で味わうことができるかき小屋や、船に乗って水揚げの様子を間近で見ることができる水揚げ見学も実施している。水揚げ見学担当の沖原光太朗さんに案内してもらいながら小型船で沖に出ていくと、シーズン真っ盛りということで、日が出たばかりの朝7時でも既に湾内の至る所で漁が行なわれていた。島田水産のかき筏に近づくと、船を筏に固定するために沖原さんが筏の上へ。竹でできている筏は見るからに足場が不安定なのだが、沖原さんも筏を挟んで向かい側にいる漁師さんたちもすたすたと歩いていく。なかなか見ることができない距離でのかき漁はなにもかも新鮮で、かきがびっしり付いた約10mの垂下連[すいかれん]を船に引き上げていく様子は迫力満点。かき漁見学の後は厳島神社の近くまで行けるサービス付き。小型船なのでフェリーの大鳥居便よりも鳥居に近づけるのが嬉しい。
大潮の満潮になるとさらに厳島神社の鳥居の近くまで行ける。見学の時間帯と満潮のタイミングが合う時期を選ぶお客さんもいるのだとか。
沖原光太朗さんの解説を聞きながら漁見学。1つの筏から30万個ものかきが採れる。
一度に10本の垂下連を船に引き上げる。
1時間ほどで船を降りると、すっかり空腹に。漁見学とセットの焼きがき、かき雑炊をいただく。焼きがきはちょうどいい塩味と炭火の香ばしい香りが食欲をそそる。かきたっぷりの雑炊は漁見学に参加した人しか味わえない一品で、優しく温かい味わいが冷えた体に染みた。「小ぶりながら実入りがしっかりしているのが広島かきの特徴です」と沖原さんに教えてもらったとおり、ぷりぷりで食べ応えのあるかきが雑炊の良いアクセントに。「早起きは三文の徳」とはよく言ったもので、朝から充実した時間を過ごすことができた。
かきが主役の雑炊はシンプルな味付け(写真は2人前)。
焼きがきは水気がなくなりきつね色になるまで待つ。
焼きがきはセルフなので、美味しく焼けるようかきの状態に集中。
焼き上がるのを待つ時間が楽しい。
焼きたて熱々をほおばる。
水揚げの後はかきをむき身に加工する「かき打ち」も見学できる。
目にもとまらぬ早さで殻を取っていく熟練の技に驚愕。
食文化がつくりだす
海景をたずねて
島田水産を後にし、国道2号を広島市方面へ。高速道路より時間がかかるが、あえて国道31号、国道487号を経由して広島市街から沿岸部へ走り、車窓の変化を楽しむことにした。乗り心地が良く意のままに操れるインプレッサ STI Sportなら、遠回りして走りを愉しむのも悪くない。島田水産から2時間ほどで到着した能美島は、沿岸部を走れば干潟にあるかきの種を育てる抑制棚や海に浮かぶかき筏と出会える。さらに、島南部に位置する標高438mの陀峯山[だぼうざん]からは美しい瀬戸内海を一望できる。煌めく波間に浮かぶかき筏や行き交う漁船、大小の島々が織りなす多島美はいつまでも見ていたい風景だった。
陀峯山へは深江からクルマで登れる道がある。途中、道幅が狭い区間があるので注意。
瀬戸内海を一望できる天狗岩は映画やCMのロケ地にもなっている。
最後に訪れたのは、平和記念公園そばの元安川にある「かき船 かなわ」だ。江戸時代初期、広島のかきは大阪まで船で運搬・販売され、中期には船で試食も行なうように。次第に船上に座敷を設けて料理を提供する「かき船」となった。「かき船 かなわ」も船上に店舗を構え、広島の文化である「かき船」を現代に継承している。料理に使用されるかきは、広島湾の沖合約30km、瀬戸内海でも屈指の透明度を誇る大黒神島沖の筏で生育・採取されたもの。「どのお料理にも、生でも食べられる安全なかきを使っています」と女将の山本直子さんが教えてくれた。「かきの土手鍋」は広島の郷土料理で、こちらでは白味噌、桜味噌、赤味噌の3種類を季節に合わせて調合した味噌を使用している。「かきと林檎のグラタン」はくりぬいた林檎の器にホワイトソースとかきを入れて焼き上げた一品。意外な組み合わせだが、ホワイトソースとかきのクリーミーさと、りんごの酸味・甘味が絶妙にマッチしていた。
味噌の味が染みこんだふわふわのかきを楽しめる土手鍋。
「かきと林檎のグラタン」にはかきが5個も入っている。
1階の「瀬戸」からの眺め。「瀬戸」ではコース料理のほかに、かき料理を単品でも注文できる。
2階の「和久」では個室でコース料理を楽しめる。
1963年に平和大橋東詰にて営業を始め、2015年に現在の元安橋東詰に移動した。
女将の山本直子さんおすすめの生がきは、つるんとした滑らかな食感で、口いっぱいに磯の香りが広がる。
時期や場所を問わずかきを食べることができる時代だが、産地を訪ねて生産者や自然、文化に触れながら旬を味わうことは、当たり前に行なっている「食べる」ということをより特別な体験にしてくれる。これも旅の醍醐味の一つかもしれない、と改めて実感する旅となった。
「かき船 かなわ」からすぐの元安橋からは広島のシンボル・原爆ドームを望むことができる。
島田水産
広島県廿日市市宮島口西1丁目2-6
TEL:0829-30-6356(かき小屋)
営業時間:10:00~20:30
※かき直売は8:00より可能。
※変更の場合あり。
休業日:不定期
「水揚げ見学と厳島神社沖遊覧」
水揚げ時期(10月~5月上旬)の月~土曜日に実施。
最少催行人員2名。前日までに要予約。詳細はHPへ。
料金:【食事あり】(大人)3,000円+税/(高校生以下)1,000円+税 【食事なし】(大人)2,000円+税/(高校生以下)無料
https://shimadasuisan.com/
かき船 かなわ 瀬戸・和久
広島県広島市中区大手町1丁目地先
TEL:082-241-7416
営業時間:(1階・瀬戸)11:00~14:30、17:00〜L.O.21:00/(2階・和久)11:00~14:00、17:00~L.O.20:00
店休日:年末年始
https://www.kanawa.co.jp/
注)新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため、営業時間・営業内容に変更が生じる場合があります。事前に各スポットへお問い合わせください。
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