SUBARUでは、誤操作や誤認など事故につながる状況を減らすために、良好な視界、使いやすい操作系、疲れにくいドライビング空間をつくる“0次安全”という考え方でクルマを開発しています。今回ご紹介するデジタルマルチビューモニターは、良好な視界の確保をサポートするシステムですが、私たちが重視しているのはあくまでもドライバーの目視による直接視界を確保することです。そのためにピラーの断面形状を工夫したり、ドアミラーの付け根に三角窓を設けたりするなど、運転席から前後左右を見たときの死角を低減する努力をしています。それでもクルマの構造上、死角を完全になくすことは難しいのです。そこをカメラでとらえた画像をモニターに表示することでサポートするのがデジタルマルチビューモニターです。
レヴォーグ レイバック(以下レイバック)のデジタルマルチビューモニターの原型が、2020年にレヴォーグに搭載したシステムです。高解像度カメラをフロントグリル中央部、助手席側サイドミラーの下部、リヤゲート中央のエンブレムの下部3カ所に搭載し、フロントビュー(車両前方)、サイドビュー(助手席側の側方)、リヤビュー(後方)の高精細画像を11.6インチセンターインフォメーションディスプレイに表示しました。レイバックではドライバー席側のドアミラー下部にもカメラを搭載し、合計4台のカメラでクルマをとりまく360度全方位を映すことを可能としました。そこから得られたデータを合成してクルマを真上から見たような映像で周囲の状況を表示するトップビューと、斜め上から見たような映像で表示する3Dビューを見ることができるようになりました。トップビューは駐車時や低速走行時に周囲の状況を確認するのに便利です。3Dビューは前後左右に斜め方向からの視点も加えた8つの視点から見ることができ、出発前に周囲の状況を確認する際にお使いいただくことを想定しています。
フロントカメラの取り付け位置については、ナンバープレート付近の目立たないところに配置するケースもあるようですが、SUBARUでは衝突時の歩行者保護機能も考慮した上で、フロントグリル中央のできるだけ高い位置にレイアウトしました。ディスプレイをパッと見たとき、ドライバーの視点に近い映像の方が実際に見ていたものとディスプレイに表示されているものとの位置関係を結びつけやすいので、認知スピードが上がるのです。それが安心と安全を重視しているSUBARUらしいところです。
さらに、都会的なSUVを目指して開発したレイバックでは、都市部の見通しの悪い交差点を走行するような場面を想定してデジタルマルチビューモニターにAUTOモードをSUBARUで初めて搭載しました。これは、車速が15㎞/h未満になると自動的にセンターインフォメーションディスプレイにフロントビューと前側の一部を映す部分トップビューを表示する機能です。密集した住宅街の狭い路地を走行しているときなど、一時停止して前方の状況を確認しながらゆっくり発進するような場面で、予めフロントビューの映像がディスプレイに表示されているので、切り替え操作の必要がなく、ステアリングから手を放さずにディスプレイをひと目見ただけで前方の死角の状況を知ることができます。このとき、NAVI画面などカメラ画像以外を見たいときは、センターコンソールにある切り替えスイッチで表示を切り替えることができます。
お店で試乗される際には、デジタルマルチビューモニターをぜひAUTOモードで使ってみてください。クルマのボディサイズに慣れていなくて、狭い道での取り回しに不安を感じるようなときほど、本モードの便利さや安心感を実感していただけるはずです。
今月の語った人
株式会社SUBARU ADAS開発部 ADAS開発第一課
東京都江戸川区生まれ。故郷の特産品である小松菜を食べて育つ。小松菜は近所からお裾分けでいただくなど、常に身近にあった野菜で、お気に入りのレシピはお豆腐と油揚げを合わせた小松菜のお味噌汁。両親のクルマは多人数でわいわいでかけて愉しめるワンボックスワゴン。一方、隣にはスポーツセダンを乗り継いできた運転好きの祖母が住んでいて、助手席に乗せてもらってジェットコースターさながらのスポーティな運転を愉しんだ。どちらにもそれぞれの愉しさがあることを知る。昨年、「時間のある今こそ存分にクルマの愉しさを味わいたい」と思い、SUBARU BRZを購入。社内の仲間が主催するジムカーナの走行会に参加したり、ふと思い立って日帰りの長距離ドライブに出かけたりしている。
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