中央道勝沼インターチェンジ近くのフルーツライン沿い駐車場からの夕景。灯りが燈り始めた甲府盆地のはるかかなたには南アルプスの高峰がそびえ立つ。
Photographs●田丸瑞穂
SUBARU on the Road
煌めくフルーツラインと
彩甲斐街道[さいかいかいどう]冬の旅
山梨県甲府市〜埼玉県秩父市
中央道勝沼インターチェンジ近くのフルーツライン沿い駐車場からの夕景。灯りが燈り始めた甲府盆地のはるかかなたには南アルプスの高峰がそびえ立つ。
Photographs●田丸瑞穂
フルーツラインは甲府盆地北斜面の果樹地帯を走り抜ける広域農道。
農道と言っても道幅は広く、ところどころに甲府盆地を見下ろす眺めの良い駐車スペースもあるので、快適なドライブを愉しめる。冬季は農作業車両や果樹を求めて訪れる観光客のクルマもないため、走りを愉しむライダーやサイクリストの姿も多く見かけた。
今回はインプレッサSPORTでフルーツラインを堪能し、雁坂トンネルを抜けて山梨と埼玉を結ぶ国道140号(彩甲斐街道)で秩父鉄道秩父線の終着駅、三峰口を目指した。
歴史と文化が息づく
街並みを抜けて
マグネタイトグレー・メタリックのインプレッサSPORTを相棒に、甲府をスタートして雁坂トンネルを抜けて秩父を目指す今回の旅。初日は農閑期で交通量の少ないフルーツラインを景色を愉しみながらのんびりと走ることにした。取材日はまだ松の内とあって甲府の街はお正月ののんびりした風情が漂っていた。2021年は武田信玄公生誕500年という節目の年ということで、まずは武田神社にお詣りして初詣の人たちに混じって旅の安全を祈願する。
甲府駅北口側にある“甲府 時の鐘”。鐘楼はかつて甲府城下で使われていたものを写真や鳥瞰図、礎石を基に忠実に再現し2013年に新造されたもの。
甲府駅から北に一直線に伸びるなだらかな登り坂を登り切ったところにある武田神社。
甲府の街を抜けて東に5分ほど走り西関東連絡道路に入る。片側一車線のほぼ直線に走る自動車専用道路で、一つめのトンネルを抜けると眺望が一気に開け、周囲360度を山に囲まれたなだらかな傾斜地が現れた。そのほとんどがぶどうや桃、さくらんぼなどの果樹畑として利用されている。進行方向右手前方の山間からは富士山の頂も顔を出していた。フルーツラインはこの果樹畑の中に設けられた広域農道で、西関東連絡道路と、その先埼玉方面に北上する国道140号をぐるりと取り囲むように走っている。
フルーツラインは甲府盆地北斜面(山梨市、甲州市、笛吹市)の果樹地帯を抜ける広域農道。奥に見えるのは富士山。
春先から秋にかけて、さまざまな果樹が実るこのエリアは、景色が愉しめるだけでなく新鮮な果物狩りもできるので、観光客で賑わうが、訪れた時はオフシーズンとあって交通量は少なく、甲府盆地を見下ろす眺めの良い丘にクルマを駐めておむすびを食べているカップルや、キンと冷えた空気の中に軽やかな排気音を響かせて走り抜けるライダーなど、皆思い思いにフルーツラインで冬の一日を愉しんでいた。さっそくインプレッサを走らせてみる。片側一車線で幅員には余裕があり高低差は少なく、コーナーの曲率も小さくて見通しの良い道が続く。ただ、ドライブウェイと違って路面はそれほどコンディションが良いわけではなく、所々に思わぬギャップもあるので速度は控えめにするのが正解。また、夜景スポットとしても人気のルートなので、陽が傾き始めてからの風景もお見逃しなく。
フルーツラインのなだらかな傾斜地を抜けるワインディング路を走り抜けるインプレッサSPORT。
富士溶岩焼きで
身体の芯から温まる
旅の二日めは国道140号を北上する。山梨県と埼玉県とをつなぐ国道140号は、山梨側は「雁坂みち」埼玉側は「彩甲斐街道」と呼ばれ、県境には一般国道の山岳トンネルとしては日本一の長さをもつ雁坂トンネルがある。この雁坂トンネルの周辺エリアは路面凍結が予想されるため、インプレッサにはしっかりとスタッドレスタイヤを装着してきた。
雁坂トンネル料金所手前にある路面が凍結した西沢大橋を走り抜けるインプレッサSPORT。
このループ橋の下には景勝地、西沢渓谷への散策ルートの入り口がある。
国道140号の山梨側は、道に寄り沿うようにして笛吹川が流れる谷筋を登っていく。下流域で富士川に合流する一級河川笛吹川の名前には悲しい由来があった。笛吹川上流にある芹沢の里に笛の上手な権三郎という少年が母親と共に暮らしていた。ある時大洪水で母が濁流に飲み込まれて行方不明になってしまい、母が好きだった篠笛を吹きながら捜したが見つからず、権三郎も疲れ果てて川に落ちて亡くなってしまう。その後川の音が権三郎の吹く笛の音に聞こえることから川の下流を笛吹川と呼ぶようになったという。母子が住んでいた芹沢の集落には、笛吹権三郎の石像が設けられている。
笛吹川の名前の由来となった笛吹権三郎の石像。
かつて権三郎が母と一緒に暮らしていた芹沢郷にある。
芹沢集落から10分ほど甲府寄りに戻ったところにある民芸茶屋「清水」でランチをとることにした。お目当てはいのぶた料理。猪と豚を交配させたいのぶたの肉は、猪肉ならではの赤身の味わいと豚肉の旨味が凝縮された美味しさが特徴。いのぶたは生産者が少なく希少性の高い食材。現在清水では、群馬県上野村で育てられたいのぶた肉を使っている。雁坂トンネルによって群馬とのアクセスも良くなっているのだ。メニューの“いのぶたバーベキュー”をオーダーする。特製のガスコンロの上に富士山の溶岩を切り出して作られた厚さ約1cmのプレートを載せ、じっくりと熱を含ませてから、スライスしたいのぶた肉や輪切りの玉ねぎなどを載せる。どの具材も焦げ付くことなくじわじわと火が通っていく。落ちた脂は表面に開いた無数の穴に徐々に吸い込まれていくが、ガスコンロに落ちて煙を上げることがないのは溶岩ならではの効果だ。みずみずしさを保ったまま、余計な脂のみを落として焼き色が付いたところを箸で掬い取り、好みで甘辛ダレをつけていただく。外気温0度近いが、燦々と陽光が降り注ぐ窓際のテーブルで滋味深い味わいに舌鼓を打っていると、身体の奥底からぽかぽかと熱が湧いてきて、幸せな気分になってきた。
雁坂みち沿いにある民芸茶屋「清水」では、希少価値の高いいのぶた料理を味わうことができる。おすすめはここでしか味わえない富士山の溶岩プレートを使用した「いのぶたバーベキュー定食」(¥1500)。
他にいのぶた鍋やいのぶた肉めしや甲州の名物料理、鳥もつ煮、いわな炭火焼などもある。
しっかりと腹ごしらえをして、雁坂トンネルに向けて再びインプレッサを走らせる。道は徐々に傾斜がきつくなり、路面には凍結防止剤が撒かれるようになる。そんな状況でもインプレッサは4輪がしっかりと路面をとらえ、何の不安も感じさせることなくグイグイ登っていく。こんな時、SUBARUで良かった!と実感する。
1998年4月に開通した雁坂トンネルは、現在一般国道の山岳トンネルとしては日本最長の6625mの長さを持つ。料金は普通車¥740。
豊かに水を湛えた広瀬ダムのダム湖を過ぎ、半ば凍結した西沢大橋を走り抜けて全長6625mの雁坂トンネルへ。トンネルを抜けるとそこはもう埼玉県。ここからは下り坂となるのだが、山梨側よりも傾斜がきつくタイトなコーナーが増え、凍結注意の注意喚起標識も次々と現れる。やがて、滝沢ダムの巨大な壁の直前を走るループ橋に至る。先ほどと違いこちらのダム湖にはほとんど水が無く、峠ひとつ越えるだけでこんなにも環境が変わるのか〜と改めて気づかされた。このまま彩甲斐街道を進めば秩父、長瀞など魅力的な観光スポットに導いてくれる。今度はそちらのエリアに足を伸ばしてみたい。
滝沢ダムの下流に架かる巨大なループ橋。半周ずつ 2つの橋があり、東側半周の「大滝大橋」と西側半周の「廿六木大橋」をあわせて「雷電廿六木橋(らいでんとどろきばし)」と呼ばれている。
木造のクラシカルなデザインが風情を感じさせる三峰口駅は、秩父鉄道秩父線の終着駅。傍らにはSLの転車台がある。
甲府駅〜武田神社〜民芸茶屋 清水
〜広瀬ダム〜滝沢ダム
イラストレーション・もとき理川
民芸茶屋 清水
山梨県山梨市三富川浦339-1
TEL 0553-39-2911
営業時間 11:00-15:00 17:00-19:00
定休日:水曜
注)新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため、営業時間・営業内容に変更が生じる場合があります。
・取材は1月4日〜6日(緊急事態宣言前)に行なっています。
・取材においては十分な感染予防対策を講じて行なっております。
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