Touring with SUBARU
美しい稜線が連なる山里で
春の気配と大地の記憶に出会う
埼玉県秩父郡小鹿野町
埼玉県秩父郡小鹿野町
この冬は例年にも増して雪が多く、春の訪れがいつになく待ち遠しかった。本格的な春はまだ先だけれど、ひと足早い春の兆しもちらほら見られるように。そんな芽吹きの気配を求めて、ダークグレー・メタリックのレヴォーグ1.6GT-S EyeSightで秩父に出かけた。秩父は周囲を秩父山地に囲まれる盆地であるだけに、走る道によって山の景色が劇的に変わる。変化に富んだ車窓の連続に、飽きることがなかった。
関越自動車道花園ICから約50分、秩父山地にうっすらと雪の残る秩父に、ひと足早い春を探しにやってきた。朝は都心よりかなり冷え込むけれど、ドライブの相棒・レヴォーグ1.6GT-Sにはシートヒーターが装備され、背中から腰までぽっかぽか。季節の変わり目にはありがたい。
国道140号を南下、秩父盆地の南端には日本二百名山の武甲山[ぶこうざん]がどっしりと立ちはだかる。やがて国道299号から花と名水の里として知られる小鹿野[おがの]町へ。黒海土[くろかいど]バイパス前交差点から分岐した県道沿いで、自生地としては日本一の規模を誇る、約5000m2のセツブンソウの園地にたどり着く。例年2月下旬から3月中旬には直径約2cmの白く可憐な花が密生し、まるで新雪が積もったかのような風景が広がる。
花と並んで町を代表する名水を味わってみたいと、平成の名水百選に選ばれた毘沙門水[びしゃもんすい]の湧出地にも足を運んだ。水道の蛇口が6つ並び、年配の夫婦がいくつものポリタンクに水を汲んでいる。「飯能から通ってもう10年になる。安いお茶やコーヒーでも、格段に美味しくなるよ。試しに一杯飲んでみたら?」と薦められ、一口飲んでみて、なるほど!柔らかでマイルドな口当たりで、ほんのりと甘みも感じられる。聞けばこの水で氷を作り、毘沙門氷として町内の加盟店で提供しているそうで、食べに行くことにした。
「そば処 元六」では一年中毘沙門氷が味わえる。シロップは加盟店共通で、西秩父産の原料にこだわった7種を用意するなか、イチゴと桃太郎トマトのダブルシロップセットに挑戦。ふんわりとかいた氷にシロップをとろり。イチゴは果肉が残り、トマトは爽やかな甘みで後味サッパリ。何より氷が繊細で頭にキーンと来ない。「岩塩をかけて塩トマトにしても」と若女将からアドバイス。次回は源作印ワインを蒸発処理・ノンアルコール化した赤・ロゼワインのシロップにしようと期待が膨らんだ。
次に足を運んだのが、「焼肉レストラン 東大門」。店先をびっしりと飾るのは、完食の記念写真。そう、こちらは小鹿野町発祥のわらじかつ丼のメガサイズで有名なのだ。2合のご飯をよそった大きな丼から、ロースとモモ各130gを揚げたトンカツが大胆にはみ出している。さすが精肉店直営だけあって、肉質が柔らかでジューシー。2人で食べてもOKと良心的なので、女子2人で約1.4kgをペロリと完食した。
空前の絶景ブームも手伝って、今、秩父では雲海スポットが注目を浴びている。翌朝はかねてから沿線のポスターで目にしていた「秩父ミューズパーク」の雲海を見るためにレヴォーグを走らせた。雲海の発生率が高いシーズンといえば、春と秋。日の出から朝7時位までが狙いめという。日の出直後、北エリアの旅立ちの丘に向かうと、武甲山から連なる秩父山地と秩父の街並みに、淡いベールを被せたように雲海が広がっている。山の端からゆっくりと昇る朝日にきらきらと照らし出されていた。
天気に恵まれた2日目は、秩父札所三十四ヶ所観音霊場の31番、「鷲窟山[しゅうくつさん] 観音院」を訪ねる。志賀坂峠に向かって国道299号を進むと、ノコギリ歯のような山容が特徴の日本百名山のひとつ、両神山が迫ってくる。黒海土バイパスの交差点付近は見晴らしがよく、両神山をはじめとした連山が美しく映える。途中右手に逸れて道なりに進むと仁王門にたどり着いた。ここから296段の石段を上り切った観音山中腹に、大きな岩壁に囲まれるように観音堂が建つ。境内にはその昔、修験者たちが荒行を行なったという落差約30mの聖浄の滝の流れ落ちる音だけが響き渡り、心が洗われるよう。滝の傍らには爪彫り千躰仏と呼ばれる、弘法大師が一夜にして爪で彫ったと伝わる体長18cmの磨崖仏 [まがいぶつ]が確認できた。東奥の院に進むと岩窟にも石仏群があり、境内全体で約1万8千体の石仏があるとか。また境内に見られる疑灰質砂岩[ぎょうかいしつさがん]は約1700万年前の火山活動を物語る地層だそう。
秩父エリアはジオパークに認定されており、地層の断面が見られる場所は他にも。国道299号を秩父方面に戻った赤平川右岸に、「ようばけ」と呼ばれる、高さ約100m、幅約400mの新第三紀層の地層がむき出しになっている。約1500万年前に堆積したといわれるこの地層からは、クジラやサメ、貝類などの化石も見つかったそうで、そんな地層がありのままの姿ですぐそばにあることに驚き、同時にこの辺りが太古の昔は海だったことに思いを馳せた。ひと足早い春を探しに来たけれど、地球の記憶が刻まれた、壮大なロマンにも出会えたことは収穫だった。
今回は国道や県道から細い山道に入ることも多かったのだが、レヴォーグの小回りの利くしなやかな走りのおかげで、細かいコーナリングでも安定した快適なドライブとなった。
今月のルート
今月の紹介ポイント
埼玉県秩父郡小鹿野町下小鹿野824
TEL 0494-75-0456
営業時間:11:00〜15:30、17:00〜21:00
※土・日・祝日は11:00〜16:00、17:00〜21:00
定休日:火曜(祝日の場合は翌日)
http://www.genroku-ogano.com
埼玉県秩父郡小鹿野町小鹿野2806
TEL 0494-75-0424
営業時間:11:00〜21:30(水曜は〜15:00)
定休日:木曜
埼玉県秩父郡小鹿野町飯田観音2211
TEL 0494-75-3300
参拝時間:8:00〜17:00(11〜2月は〜16:00)
※12:00〜12:30は昼休憩
定休日:無休
http://www.chichibufudasho.com
埼玉県秩父郡小鹿野町両神小森堂上
TEL 0494-79-1100(小鹿野町・小鹿野両神観光協会)
開園時間:2月下旬〜3月中旬の8:30〜16:30
定休日:期間中無休
入園料:300円
埼玉県秩父郡小鹿野町長留2518
TEL 0494-25-1315
http://www.muse-park.com/
バックナンバー