筑波パープルラインをクリスタルホワイト・パールのFORESTER STI Sportで走り抜ける。写真は風返峠〜つつじヶ丘を走る様子。 Photographs ●小川 宏子
SUBARU on the Road
つむがれ、受け継がれていく
歴史の道をなぞる
茨城県結城市~つくば市
筑波パープルラインをクリスタルホワイト・パールのFORESTER STI Sportで走り抜ける。写真は風返峠〜つつじヶ丘を走る様子。 Photographs ●小川 宏子
段々と暖かさを感じ始める春先。せっかくなら、ドライブも街歩きも両方楽しみたい!と思い、茨城県結城市と筑波パープルライン(つくば市)を巡る旅を計画した。結城市では日本最古の歴史を有する絹織物「結城紬」の体験や、蔵造りなどの古い建物が残された街並みを楽しむ街歩き&ドライブ。さらに足をのばして、筑波パープルラインでは峠のワインディングに挑むことに。今回の相棒はFORESTER STI Sport。街と峠の両方でその走りを楽しもうと意気込みながら、結城の街へと走り出した。
糸と歴史をつむぎ続ける街
茨城県結城市の絹織物、結城紬。全工程が手作業で行われ、その中の「糸つむぎ」「絣[かすり]くくり」「地機[じばた]織り」は国の重要無形文化財に指定されている。また、伝統的工芸品、ユネスコ無形文化遺産にも登録され、まさに世界に誇る工芸品だ。市内にあるつむぎの館は、そんな結城紬を後世に伝える総合施設として造られた。製作工程をはじめ、結城紬の歴史資料館の公開、結城紬の展示、販売も行っている。今回は機織り体験ができるということで工房を訪ねた。体験で使用する織機は地機[じばた]、高機[たかはた]の2種類があり、結城紬では主に仕上がりの模様で使い分けているそう。初心者は高機を使ったコースター作りがおすすめとのことで、早速作ってみることに。
この日はカラフルな糸を選んだので、とん、と筬を引く度に糸が色とりどりの表情を見せるのが楽しい。
完成すると15cm程のコースターが出来上がる。
高機は板の上に座って作業を行う。ちなみにこの高機は群馬県でも作られているのだとか。
敷地内には資料館や文化財登録の建造物が。建物に囲まれた中庭にいるとタイムスリップした気分になる。
まずは糸を選ぶ。よく見ると、異なる色・質感の糸が混ざっている。この体験では、製品を作る際に余った糸や生地をより合わせたものを使う。複数の色が混ざると、織った時に色がランダムに出るので自分だけの作品を作ることができる。
糸を選んだら高機に座る。大きな織機にドキドキするが、動作はいたってシンプル。片側から糸を通して整え、筬[おさ]という部品を手前にとん、と引く。次は足元のペダルを踏み替え、筬を2回引く。この動作で通した緯糸[よこいと]が押し詰められ、織り目が整う。そして糸を通す所から同じ動作を繰り返す。糸を通し、とん、ペダル踏み替えて、とんとん。工房に織機の音が心地良く響く。「集中できて、まるで瞑想みたい」というお客さんもいるそう。
その時々で選べる糸の色・組み合わせが違うので、一期一会の出合いも楽しい。
繭を広げて作った真綿を細く引き出して糸にする職人技「糸つむぎ」。人の手でつむぐのが“本場結城紬”である条件の一つ。一反を織るのに必要な繭はなんと2000個。
地機織機は複雑な柄の反物を作る時に使う。難しい織物に挑戦したい人は地機織り体験もおすすめ。
つむいだ糸に木綿の糸でくくりを入れて染め、織ることで柄が出る。このような繊細な柄も結城紬の特徴だ。
結城紬を使ったがま口や名刺入れなども販売している。
「一番伝統的な本場結城紬は、作り方も織機も変わらずに受け継がれています」と、つむぎの館の新 陽子さん。「でも、後継者不足は否めません。そのためにもこの施設があります」
真綿から途切れることなく1本の糸がつむがれるように、この文化を受け継ぎ、続ける。結城紬には人々がつむいだ歴史と思いが織りこまれていた。体験後、次は地機織りに挑戦しようと意気込みながら、つむぎの館を後にした。
表門の反対側の通りはぜひ通ってほしい道の一つ。有形文化財に指定されている縞屋(しまや)奥順、結城 澤屋の建物が並んでいる。
結城名物でひと休み
蔵の街並みから、筑波の峠へ
結城名物・ゆでまんじゅうをご存知だろうか。江戸時代末期、疫病が蔓延した際に病祓いの供え物として生まれた和菓子だ。今回訪れた「真盛堂[しんせいどう]」では、創業91年の老舗の歴史とこだわりが詰まったゆでまんじゅうをいただく。ゆでまんじゅう最大の特徴は水分を多く含んだモチモチの生地。生菓子でありながら食べ応え抜群なので、ドライブ中の小腹満たしにもぴったりだ。口に残る甘い余韻を惜しみつつ、次は「結城蔵美館」へ向かった。
真盛堂のゆでまんじゅう。
真盛堂の隣には明治36年築の見世蔵を改装した和カフェ「甘味茶蔵」も。こちらでは和菓子の他にパフェなどがいただける。
結城蔵美館は結城のアート・文化の拠点として、月替わりの展示や結城の歴史を知る常設展を公開している。大正時代の古地図を見ていると、結城蔵美館の野寺さんが「この辺りは昔から町割[まちわり](道や区画)がほとんど変わっていないんです」と、教えてくれた。確かに今の地図と見比べると一目瞭然だ。改めて周辺をドライブしてみると、直角の曲がり角や複雑に入り組んだ交差点など運転テクニックが必要な道が多いことがわかった。FORESTER STI Sportの視界の良さに感謝しつつ、安全運転で街中を巡る。自動車が生まれるなんて考えもつかなかった時代に作られた道を、なぞるように走る。街並みだけでなく、道すらもこの街に残された歴史の足跡なのだ。
結城を治めた結城家17代当主晴朝(はるとも)公の愛槍・天下三名槍(てんがさんめいそう)「御手杵」(復元)は必見。
これを目当てに訪れるファンも多いという。
写真の位置は地図に丸がついている辺り。大正時代の古地図のとおり、急な角が続く道に酒蔵や寺が立ち並ぶ。
結城蔵美館の建物は米蔵だったものを移築、改装した。梁もそのまま残されているので、訪れたら天井を見上げてみてほしい。
今度は走りたい気持ちを発散するべく、筑西つくば線、笠間つくば線を通って筑波山方面へ。目指すは「筑波パープルライン」。筑波スカイライン、表筑波スカイラインの2つを合わせた愛称だ。まずは筑波スカイラインを登り、今度はそのまま表筑波スカイラインまで下るルートを走る。段々と険しくなる道を颯爽と駆け上がった。STIパフォーマンスマフラーが奏でる力強いエキゾーストノートを楽しみながら、つつじヶ丘に到着。ひと休みして今度は下りへ。表筑波スカイラインは距離が長い上にカーブが多く、運転の腕を試されている気分になる。ストイックに思えるが、ひたすら走るドライブも案外楽しい。開けた窓からこの地の歴史の風を感じながら、帰途に就いた。
筑波パープルラインにある風返峠の付近には大きな岩をぐるりと1周するユニークな道がある。
筑波パープルラインは50~100mごとにカーブがあるワインディングとして知られ、ドライブを楽しみに来る人が多い。この日も多くのドライバーと出会った。
2つの頂きからなる筑波山。「西の富士、東の筑波」と称される名峰だ。
つむぎの館~手作り和菓子処 真盛堂~結城蔵美館
~筑波パープルライン
つむぎの館
茨城県結城市大字結城12-2
TEL:0296-33-5633
開館時間:【平日】10:00~16:00(最終入館は15:30)
【土日祝】10:00~17:00(最終入館は16:30)
入館料:無料(資料館、体験のみ有料)
休館日:火曜日・水曜日・年末年始
駐車場:あり(20台収容可、大型バス可)
手作り和菓子処 真盛堂
茨城県結城市結城1362
TEL:0296-33-3645
営業時間:8:00〜18:00
定休日:木曜日(祝日の場合は営業)
駐車場:あり
和カフェ 甘味茶蔵
茨城県結城市結城1362
TEL:0296-47-3266
営業時間:11:30〜16:00
(季節により変更あり)
定休日:木曜日(祝日の場合は営業)
駐車場:あり
結城蔵美館
茨城県結城市結城1330
TEL:0296-54-5123
開館時間:9:00~17:00
入館料:無料
休館日:木曜日
駐車場:あり
注)新型コロナウイルス(COVID-19)の感染予防のため、営業時間・営業内容に変更が生じる場合があります。事前に各スポットへお問い合わせください。
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