Touring with SUBARU
再び輝き始めた
宮城・沿岸の町へ
宮城県松島町〜東松島市〜女川町
宮城県松島町〜東松島市〜女川町
新型フォレスターX-BREAKのハンドルを握っての初ツーリング。
選んだルートは久しぶりに訪れる宮城県沿岸地域。東日本大震災から約7年半。この間、訪れる機会のなかった場所だ。報道やガイドブックを通して知る現地は、復興を遂げ再生された姿だ。今回、現地のありのままの今をこの目で確かめたいという思いもあり、震災の2年前に本誌の取材で訪れた松島から、女川までを北上するシーサイドルートを辿った。途中、ご当地の名産を自分の手で作る体験にも挑戦。土地ごとの食文化や工芸に親しむ旅にもなった。
暑さ厳しい東京を脱け出して、新型フォレスターX-BREAKで訪れたのは日本三景のひとつ、松島。アイスシルバー・メタリックのボディに、レッドオレンジのラインが効いたスタイリッシュなデザインのX-BREAKが、緑と青を基調にした多島美の風景の中でひときわ映えて見えてくる。三陸自動車道松島北ICから国道45号で約10分、島々を巡る遊覧船発着所の近くにフォレスターを停めると、潮の香りに満たされる。震災前と変わらぬ多島美を前にして、胸を撫で下ろした。
まず初めに訪れたのは、松島湾を目前にした一等地に立つ「松島蒲鉾本舗 総本店」。創業85年になる笹かまぼこの老舗で、同じ通りに他に2店舗ある。こちらで笹かまぼこの手焼き体験ができると聞き、早速チャレンジ。奥の丸テーブルの網の上に笹かまぼこを置き、動かさずにじっと待つこと6分ほど。両面に焼き色が付き、生地がぷくーっと餅みたいに膨れてきたら食べ頃だ。板蒲鉾のように蒸さず、生地をそのまま焼くため柔らかな食感で、ほんのり甘く香ばしかった。
次に覗いたのは数軒先の「二八屋物産店」。外のガラス戸には、津波が1.4mに到達したことが手書き文字で記されている。ご主人の本村直二郎さんは「松島土産に工芸品があったら」と独学でこけし作りを習得、松島直秀こけしを編み出した。工人歴は約70年。ガラス越しに見学できる工房でろくろを操るご主人にお話をうかがう。「いくつに見える? まだ91歳」と笑うご主人の腕には力が漲[みなぎ]り、慣れた手つきで次々にミズキの角材でこけしの頭を仕上げていく。松島に多い椿の花が描かれた素朴な趣のこけしだ。津波で店内のこけしは全て流れてしまったけれど、再び作り始めて棚を一杯にしたのだと、アルバムを見せてくれた。
店内ではこけしの絵付けもできる。外国人女性がひと味違った絵付けを施す隣で、私もスパナくんをモチーフにして描いてみた。上出来とは言い難いけれど愛嬌があっていいかも! ニス塗りをしてもらい、乾くのを待って明日取りに来ることにした。
夕方、松島湾に浮かぶ260余りの島々が一望できる4つの景勝地「四大観[しだいかん]」のひとつ、「壮観」が望める奥松島の大高森へフォレスターを走らせる。朝日の美しさで知られる松島では珍しい夕日スポットだ。奥松島パークラインを進むと道路脇に「過去の津波浸水区間ここから/ここまで」という標識が点在する。そのうち更地や新たに出来た道、土砂の山が現れ、防潮堤により海は望めなくなる。並走するJR仙石線の野蒜[のびる]駅と東名[とうな]駅は、現在は内陸に移転。旧野蒜駅舎は「震災復興伝承館」に姿を変え、2階の写真展示により震災の記憶を今に伝えている。建物の外壁には津波浸水深3.7mを示す表示も。その奥にはかつてのホームやゆがんだ線路が震災時のまま残され、自然の力の大きさを物語っていた。
宮戸島へ渡ると静かな入江の風景に心が和んだ。まず宮戸郵便局向かいの「貞観[じょうがん]津波碑」を訪ねる。近所の方によれば1100年以上前の貞観地震の際、二つの津波がぶつかった地点で、ここから下に家を建てるなと伝えられてきたそう。震災時はここから10m手前まで津波が迫ったが、多くの人が石碑より高い場所に逃げて助かった。大高森の遊歩道を歩き始めて約15分、標高約106mの展望台からは360度のパノラマを一望。晴れていれば東に金華山、北に栗駒山、西に松島湾の島々が雄大に広がる。
翌日は三陸自動車道をさらに東へ進み、女川町へ。町の様相は一変、6mほど嵩上げされた駅前エリアには新たな商店街が生まれ、住宅地は標高10m以上の高台へと移っていた。防潮堤はなく、町なかに海風が通り抜ける。
女川湾を望む「女川水産業体験館 あがいんステーション」では郷土料理のサンマの昆布巻を体験。秋から冬に水揚げされるサンマを下処理し、昆布を巻き付けて干瓢で結ぶ。その後加工場で味付けをして自宅に送ってもらえる。ここでは女川町で獲れたもの、もしくは加工された商品の中から約30品目を「あがいんおながわブランド」として認定。売店で購入することもできる。女川からは美しい海岸線を望むリアスブルーラインを走り、旅を続けた。
今回の旅は、実際に足を運ばなければ知り得なかった、宮城県沿岸部の今を知る貴重な機会となった。点ではなく線で捉えるツーリングだからこそ出会えた風景もある。震災の記憶も復興への歩みもつぶさに心に刻み、これをきっかけにもっと現地に足を運ぼうと誓うのだった。
今月のルート
今月の紹介ポイント
宮城県牡鹿郡女川町女川浜字大原479-2
TEL 0225-98-7839
営業時間:10:00〜17:00
定休日:月曜(祝日の場合は火曜)
サンマの昆布巻体験料:1人2500円
(5名〜20名 ※2〜4名の場合は応相談)予約制
http://www.onagawa.co.jp/again-station/
※「あがいん」は、女川地方の方言で、どうぞお召し上がりください、という意味と、英語のagainのふたつの意味をかけているそうです。
宮城県宮城郡松島町松島字町内120
TEL 022-354-4016
営業時間:5月-11月 9:00〜17:00 12月-4月 9:00〜16:00
※日により営業時間の変更あり
定休日:無休
笹かまぼこの手焼き体験:1本200円(数量限定)
http://www.matsukama.jp/
宮城県宮城郡松島町松島字町内80
TEL 022-354-3216
営業時間:8:00〜18:00
定休日:無休
こけし絵付け体験料:大人800円
受付は8:00〜16:00
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