水平対向エンジンと電動技術を組み合わせ、誰もが実感できる走りの愉しさと運転のしやすさをご提供するe-BOXER。専用の高電圧パーツを搭載していますが、万が一の事故の際もガソリン車と変わらない確かな安全性を備えています。
その一つが“衝突後の安全対策”です。従来からSUBARUでは“衝突後もドアを片手で開けることができること”“事故の衝撃でドアロックがかかってしまわないこと”“電気系のショートや漏電による火災を発生させないこと”などの取組みを行なってきました。ガソリンエンジンとモーターの2系統の出力源を持つe-BOXER車は、従来からの12Vに加え100V以上の高電圧を持つ電気系を備えていますから、より徹底した安全対策を講じる必要があります。
最もケアしなければならないのは漏電です。事故の衝撃でどこかに漏電が発生すると、感電事故や、ショートや発熱による火災につながる恐れがあるからです。そこで、万が一の事故の際も漏電しないようe-BOXERには二重の安全対策を講じています。
安全対策の一つが速やかな電流の遮断です。前面衝突の場合は、エンジンルーム前端にあるセンサーから得られる衝突による衝撃や、物理的な変形による圧力といった情報から事故を検知します。そして事故と判断すると速やかにボディ後方にあるバッテリーの出力部にあるリレーを解除して電気の流れを遮断してしまいます。事故の衝撃によってエンジンやトランスミッションが後方へ移動したり破損したりしても、すでに電気が流れていないため、漏電することはありません。
二つ目の安全対策はパーツレイアウトです。まず、さまざまな衝突形態においてエンジンルーム内がどうなるか、エンジンやトランスミッションがどう動くのかを徹底的に分析し、その軌跡に保護対象となる高電圧ケーブルや高電圧が流れる関連パーツを配置しないようにしました。トランスミッション部につながっている高電圧ケーブルは、衝突によってエンジンが後方に移動した場合でも断線しないよう長さに余裕を持たせ、移動したエンジンブロックに挟まれないような位置に固定しています。
この二つ目の対策により、万が一送電ケーブルやパーツに電荷が残ってしまった場合でも漏電することはありません。
このような防御対策を講じる際に最も重要になるのが、安全を確保するために必要な目標値をどこに設定するのかということです。法規で定められている基準値を達成すれば販売は可能になり、多くの事故に対して効果を発揮することができますが、リアルワールドにおいては、それ以外のパターンの事故も起きることがあります。一方で、際限なく目標値を上げてしまうと、重量増加やコスト上昇につながります。SUBARUでは、世の中で実際に起きている事故の情報をできるだけ多く集め、それらを詳細に分析してリアルワールドで起きるあらゆる事故形態にしっかりと対応できる目標値を設定しています。私たちの仕事の半分の時間は、コンピュータシミュレーションや実車と衝突ダミーを用いた実験、そして関連するスタッフによる議論を重ねてその目標値を定めることに費やされます。
一例を挙げると、法規では定められていませんが、SUBARUでは乗用車同士の衝突だけでなく、大型トラックのように高さが異なるクルマの下に潜り込むような事故や、電信柱や立木などに衝突する事故など、バンパーやフレームで衝突エネルギーを受け止めることができないような事故も想定して、目標値を決めています。
実世界に即した合理的な目標値の設定とそれに応える車体設計によって、安心で愉しく乗っていただけるクルマができるのです。
今月の語った人
第一技術本部 車両研究実験第二部
車両研究実験第二課 担当
栃木県宇都宮市で育つ。小さい頃から親しんできたスキー、スノーボードは、今でも継続して楽しんでいる。お気に入りのゲレンデは関越道沼田ICから約30分とアクセスの良い「たんばらスキーパーク」。ICからスキー場に向かう途中にある「なめこセンター」ではスキーやスノーボードを安く借りることができ、温かいなめこ汁もいただけるので必ず立ち寄るという。現在住んでいる太田市のお気に入りグルメは「岩崎屋」太田焼きそば。個性的な真っ黒な焼きそばで、少し酸味のある濃いソース味はクセになるそう。名物の焼きまんじゅうもおススメ。
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