新型レガシィには、速度が時速20kmに達すると、トランクやリヤゲートを含む全ドアを自動でロックする機能が採用されています。この機能は他メーカーのクルマでも採用例があり、そのためお客様からの要望が多い機能でもありました。実際に全ドアを自動ロックすることは難しいことではありません。しかし、もし衝突事故でバッテリーが壊れてしまったとしたら?ドアロックを解錠するための電力が供給されず、中に乗員が閉じ込められてしまうかもしれません。
そこで、SUBARUでは、万が一の衝突時には自動的に全ドアを解錠させ、乗員の安全性をしっかりと確保した上で、この機能を採用することにしました。新型レガシィには、衝突でバッテリーが壊れて働かなくなった際に、ドアロックを自動解錠するための予備バッテリーが搭載されています。私は、このバッテリーの設計開発を担当しました。
単なる予備バッテリーの設計だと思われるかもしれませんが、これを開発するのにはいくつかの課題がありました。ありとあらゆる過酷な環境下で機能するだけでなく、生産から5年10年と経過した後でも確実に機能するものとするために、予備バッテリーにどのような性能を持たせるべきか。新規部品なので、これまでのデータやノウハウの蓄積はゼロです。最も過酷な環境がどんなものなのかを設定するところから始まりました。
また予備バッテリーの置き場所の確保も課題でした。通常のバッテリーはご存知の通り、ボンネットフード内に搭載されています。それに対し予備バッテリーは衝突時でも壊れにくいインパネ内(ナビ画面の裏あたり)に搭載しています。ところが、ここは、様々な部品が所狭しとレイアウトされている場所。他の部品やハーネスを避けつつ、整備性の良い場所を見つけるのも、ひと苦労したところです。
万が一の衝突時に確実にドアロックを解錠するために、絶対に必要なもの。ほとんどの場合は使われることなく終わる予備バッテリーですが、そこにこだわるところにSUBARUらしさがあるのです。(山下)
どんな機能もそうですが、お客様にとって煩わしかったり、使いにくかったりする機能は使われなくなってしまいます。オートドアロック・アンロック機能には、お客様のニーズや環境に合わせて設定を変えられるように、カスタマイズ機能を持たせています。(下図)これを司るのがボディ統合ユニットという部品。私はこのユニットの設計開発を担当しました。どんなカスタマイズを設定するかは、研究実験部のエンジニアと共に実際の使用シチュエーションなどを想定し検討してきました。
日本ではあまり考えにくいことですが、海外でも治安の良くない地域では、より高いセキュリティを確保できるようにセレクトレバーをP以外に入れたタイミングでロックし、運転席のドアを開けるまで解錠しないようにできます。逆に日本のように治安が良ければ、セレクトレバーをPに入れたら、あるいはエンジンを切ったら解錠するようにもできます。
また小さな部分ではありますが、自動ロック時の作動音にもこだわって開発をしてきました。試乗などの際には、ぜひここにも耳を澄ませていただければと思います。
この機能は、アイサイトのように技術をリードするようなものでは決してありません。しかし、お客様が必要としている機能を、いかに使いやすく、しかも真に安全なものとしてクルマに搭載するかを深く考え、追求しているところに、SUBARUらしさが貫かれていると思います。(高屋敷)
今月の語った人
株式会社SUBARU 第一技術本部
電子プラットフォーム設計部 電子プラットフォーム設計第一課
1989年生まれ。静岡県伊東市出身。2014年入社。小学校から大学まで野球一筋。入社後、ゴルフを始め、年に3回コンペも開催する。去年からキャンプを始め、今年は秋冬のキャンプに挑戦するのだそう。サッカー観戦も趣味。
株式会社SUBARU 第一技術本部
電子プラットフォーム設計部 電子プラットフォーム設計第二課
1995年生まれ。青森県三戸郡階上町出身。2014年入社。入社後、4代目のレガシィを購入し、北関東のあちこちへドライブに出かけることを趣味としていた。その後、クルマいじりにも没頭。目下、新しい趣味を模索中。
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