今回エクステリアデザインで狙ったのは、乗りやすくて使いやすい道具としての“アクティブなギア感”を表現することでした。このモデルは、撥水ファブリック/合成皮革シートやラゲッジスムーザー機能付カーゴフロアボード、クロスバービルトインタイプルーフレールなど、実際にアウトドアシーンでアクティブに使うためのアイテムを特別装備しており、ベースモデルに対してより機能性を高めています。そのアクティブなイメージを、OUTBACKの上質感を損ねることなく際立たせることがデザインのテーマでした。
そのための手法として、ドアハンドルのメッキやルーフレールのシルバーなど光輝パーツを減らして全体をモノトーンとし、そこにアクセントカラーのイエローグリーンを加えました。イエローグリーンは2016年に発売したOUTBACKの特別仕様車X-ADVANCEで初めて採用した色で、アウトドアで使うカラビナやマグライトなどに使われているアルマイト鋼のような質感を持たせています。力強さ、機能性を感じさせるブラックの中にこの色を狭い範囲で入れることにより、発光するような効果が生じ、色としてのエネルギーが生まれます。このカラーコーディネイトにより、都市空間とアウトドアシーンをスムーズに行き来する、OUTBACKのアクティブで洗練されたイメージを表現しました。
今回、外装ではイエローグリーンをフロントドア・サイドクラッディングのOUTBACKロゴと、フロントグリル内の加飾に使っています。特にフロントグリルについては、細くて繊細な線で消えていくような見え方になるよう工夫しました。そのために重要だったのが、その周囲にあるグリルの黒の質感でした。
今回新たに開発した「ラスターブラック」は、OUTBACK X-BREAKのエクステリアデザインにおいて要となる色です。鋳鉄のような質感を持つ艶消しの黒で、フロントグリルの内側部分とリヤゲートに施したオーナメント(OUTBACK・シンメトリカルAWD)に採用しています。意図したのは鋳鉄の持つ重みや信頼感を表現し、ピアノブラック調のグリル外枠とイエローグリーン加飾とのコントラストを強調すること。またリヤのオーナメントは、マットな黒が持つ存在感やギア感、力強さを持たせることを狙いました。
艶消し色というのは使い方を一歩間違えるとプラスチック的な質感に見えてしまう難しい色です。そのため、納得する上質な艶消しブラックが完成するまで何度も検討を重ねました。同じ塗料でも、塗り方やメーカーの違いなどから仕上がりの光沢感や見え方が微妙に異なるため、イメージ通りの色ができ上がるまで、トライした試作品は15点を超えました。量産に移る段階でも協力メーカーや生産技術のメンバーと何度も試行錯誤を繰り返し、ようやく満足の行く風合いに仕上げることができました。
私たちは単にモノの上に色を塗るということではなく、そのものが持っている素材感や質感まで伝わるレベルの仕上がりを目指しています。その風合いは、写真やディスプレイ画面では判別できなくても、実際に自然光の下でご覧いただければどなたでもお分かりいただけると思います。
OUTBACK X-BREAKでは、デザインとして従来よりも大胆で思い切ったトライをしました。その背景にはDynamic×Solid(SUBARUのデザインフィロソフィー)をさらに発展させ、“より大胆に車種の個性を際立たせよう”という狙いがあります。“BOLDER”と名付けたこの新たな挑戦により、今後のSUBARU車はますますエキサイティングなデザインになっていきます。どうぞご期待ください。
今月の語った人
株式会社SUBARU 商品企画本部
デザイン部
群馬県伊勢崎市生まれ。SUBARUデザイン部に入社して、プレオニコット(2000年発売)やR2(2003年)などのデザインを担当。プライベートでは近年になって囲碁の魅力を発見した。4年ほど前に長男が群馬県太田市の碁会所に行ったのがきっかけで、ご主人とお子さん5人の7人家族みんなが打つようになり、今では家族で連碁(2人以上でチームを組んで打つ碁のこと)を楽しむこともあるそう。今年のお正月休みには、山梨県にある北杜市囲碁美術館に家族で出かけた。
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