アイサイトXは高速道路など自動車専用道路を走行中にアイサイトの快適性を飛躍的に高め、安全運転をサポートするシステムです。進入するカーブの曲率に合わせて速度を制御する「カーブ前速度制御」、料金所の手前で適切な速度に減速する「料金所前速度制御」は、ツーリングアシストの運転支援をより安心して継続的にお使いいただける機能です。また、ドライバーの方向指示器操作に対応して周囲の状況を確認し、ステアリングを制御してレーンチェンジをアシストする「アクティブレーンチェンジアシスト」や、渋滞時の運転負荷を軽減する「渋滞時ハンズオフアシスト」「渋滞時発進アシスト」、さらにドライバーに異常が発生した時に減速して停止し、ハザードランプとホーンで周囲に異常を知らせる「ドライバー異常時対応システム」などの機能も持っています。
これらの制御を行なうため、より広角で周囲の状況を把握できる新型ステレオカメラに加え、前側方、後側方の状況を把握する4つのレーダーによって車両の周囲360度センシングを実現しました。車内ではステアリング全周に装備したタッチセンサーと、センターパネル上部の赤外線カメラによるドライバーモニタリングシステムが、ドライバーの運転状態を常に見守り、フル液晶メーターがアイサイトの作動状況を表示して、アイサイトXの各種機能が使える状況になるとその状況をドライバーにお知らせします。また、GPSと準天頂衛星「みちびき」からの測位情報をルーフ後端のシャークフィンアンテナで受信し、内蔵された地図ロケーターが自車位置を特定。さらに車線単位の道路情報を持つ3D高精度地図データと3軸ジャイロセンサーからの情報と併せて、道路のどの位置で自車がどこにいるのかを正確に把握します。
従来のGPSは、衛星の位置が変わってしまうため、斜め方向から測位信号が送られる時間帯に、山や建物に電波が反射して誤ったデータを受信するケースもありましたが、「みちびき」は常に日本の位置に合わせて移動しているため、頭上方向からの信号を一直線に受信できるので他のGPSからの信号も併用して誤差が少なくできるというメリットがあります。情報精度が上がったことで一番効果が感じられるのはジャンクションやインターチェンジなど曲率の大きなカーブがある場面です。従来はACCを80km/hに設定して先行車が無い場合は、コーナーにオーバースピードで入ってしまい、ドライバーが速度をコントロールする必要がありましたが、アイサイトXは正確な位置情報にもとづいて、コーナーの曲率に合わせてシステムが最適な速度に減速することができます。また、ステレオカメラで把握できないような遠方の情報も地図ロケーターで補完できるため、レーンチェンジする際も状況に合わせて適切な制御ができるので、コーナーや交通量、規制の多い都市高速道路でもしっかりサポートします。
アイサイトXで私たちが重視したのは、“制御の質感”です。たとえばアクティブレーンチェンジアシストを開発する際は、評価部門のスタッフと設計者が同じ試験車両に乗って挙動を体感し、感覚を共有することで仕様を詰めていきました。モデルとしたのはSUBARUの中でも運転スキルの高い人たちの操作です。具体的にはレーンチェンジの際に車両の揺れがなく、ハンドルの動きが連続的で滑らか、かつ交通の流れを乱さずスムーズに加速、減速するような制御です。カーブ前速度制御についても、ブレーキングが介入するタイミングは人によって遅く感じたり早く感じたりしますが、私たちが目指したのは、早い遅いという数値ではなく、誰が乗っても違和感無く気持ちよいと感じられる制御でした。スタッフが一緒に車両に乗って走り込み、感覚の領域で“質感”を磨き上げていくのは、伝統的に“人を中心としたモノづくり”を重視してきたSUBARUならではの開発手法です。
今月の語った人
第一技術本部 車両研究実験第四部 車両研究実験第三課
神奈川県横浜市生まれ。中学まで野球に没頭。プロ野球の福田永将選手を輩出したシニアリーグの名門チームに所属。高校では有名ロックバンドのメンバーと同じ千葉県館山市の学校に通っていた母親の影響でバンド活動を開始。それをきっかけにLIVEの魅力にはまり、現在も月に一度はLIVEに通っている。洋楽ロックからライブアイドルまで守備範囲は広いが、どんなLIVEでも応援するファンの熱とパワーに差はなく、そこから元気をもらえるそう。お気に入りのホールは日本武道館と渋谷O-EAST。
第一技術本部 先進安全設計部 主査三
千葉県袖ケ浦市生まれ。父親の影響で子供の頃からクルマ好き。SUBARU入社と共にWRX STIを購入してドライブを愉しんでいる。他に自作のパソコンでの動画編集やゲームなど趣味は多い。最近のお気に入りはサバイバルゲーム。年齢や経験を問わず、多彩な人たちがそれぞれのスタンスで参加できるところや、他では味わえない緊張感が魅力。関東エリアのフィールドを回った中でお気に入りは、栃木県にある廃工場の建物をそのまま使ったフィールドとのこと。
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