池田:クルマの内外装の色(Color)や使う素材(Material)、仕上がりの触感(Finish)を総合的にコーディネートするのが私の仕事です。シートはお客様が五感で感じるパーツです。クルマを外からちらりと見た時に見えるヘッドレストや肩まわりの部分で“おっ”と目を惹くポイントがあり、ドアを開けた時には、それがインテリア全体の世界観につながり“座ってみたくなるな”と感じていただけるインパクトになります。次に求められるのはドライバーが座って感じる触感や座り心地、運転時の快適性や疲れにくさです。SUBARU車は長距離を走る方や一台のクルマを長い年月にわたって乗り続ける方が多いので、インパクトに加えて、長く使っていて飽きがこない深みをきちんと出すことを意識してデザインしています。
今回の新型レガシィ アウトバックでは都市生活でも、大自然に囲まれた旅先でも、大切な人との時間を上質なものにしたいお客様に向けたLimited EXグレードに加え、アウトドアライフを積極的に楽しみたいお客様に向けたX-BREAK EXを新たに設定しました。シートは、お客様のライフスタイルに合わせてお選びいただけるよう3種の素材を用意しました。Limited EXのファブリックシートは、レガシィ アウトバックらしい落ち着きのある内装をお求めのお客様に向け、座り心地にこだわった仕立てを追求。座り心地のよさや身体を受け止めてくれる安心感を、ふっくらとした(モール)糸と光沢のある糸で織り込んだ地厚な生地で実現しています。オプションのナッパレザーはスバルのフラッグシップに相応しい質感をお求めのお客様に向けたスバル最上級のシートです。ナッパレザーはしなやかで自然な触感が心地よい高級皮革素材で、プレミアムブランドで採用されています。ホールド性を中心に様々な革を比較し、しっとりとしたタッチ感や表面の滑らかさに拘りました。カラーは上質さとアクティブさを兼ね備えた華やかなタンと、都会的でフォーマルな落ち着いたブラックの2色を用意しました。
X-BREAK EXにはアウトドアでタフに使いたいお客様に向けて、ハードに使い倒せる機能的なポリウレタン素材を採用しました。お客様がアウトドアアクティビティでどのように使っているのかを検証し、汚れが付きにくく、付着しても落ちやすい、汚れが目立ちにくい機能的な内装を目指しました。撥水ポリウレタンは撥水性に加え、透湿性に優れており長く乗っていてもムレが少なく、手触りも良いのが特徴です。カラーは精悍でスポーティなブラックとダークグレーにアクセントとしてエナジーグリーンステッチを加えました。
板倉:シートの内部骨格を設計し、布や皮革、ポリウレタンなど、伸縮率の異なる3種の表皮素材がシワなくぴたりとフィットするようにチューニングするのが私の仕事です。新型レガシィ アウトバックのシートは包まれ感を出すために多面形状としました。内部のパッドは従来は全て同じ硬さのものを使っていましたが、新型レガシィ アウトバックでは運転中に常に身体が触れるセンター部分には柔らかい素材を、コーナリング時など身体が左右に振られるような動きを見せた時にはサイドからしっかりと支えられるように外側の部分に硬めの素材を採用しています。苦労したのは、座り心地と耐久性を両立させながら同じ内部骨格の上に伸び率の異なる3種の素材を見栄え良くパリッと仕上げることでした。伸縮率を考慮して異なる型紙を用意し、どの素材も上質感のある仕上がりになるよう配慮しています。
池田:新型レガシィ アウトバックを選んだことで、お客様の行動範囲が広がり、生活が豊かになったと実感していただけるようにという想いを込めて開発しました。3タイプのシート素材もそれぞれ3様のお客様に向けてお応えできる仕立てになっておりますのでぜひ体感していただけたらと思います。
今月の語った人
内外装設計部 シート設計課
三重県四日市生まれ。鈴鹿サーキットが近くにあったため、小学校の頃から家族でSUPER GTの観戦を楽しんで育ち、カッコいい姿に憧れてクルマ好きになる。SUBARU入社後は会社の同期や先輩と一緒にバイクツーリングを楽しんでいる。好きなツーリングスポットは、碓氷峠、榛名山、赤城山など。
デザイン部 CMF デザイン課
群馬県太田市出身。美術大学では基礎デザイン学科を専攻。物事や環境について多面的に考えデザインすることを学ぶ。SUBARUではCMF業務に15年従事し軽自動車からレガシィまで幅広い車種を担当。現在は時短勤務で8歳と3歳の二人の子育てに奮闘中。仕事と家庭の2つがあることで、頭を切り替えることができリフレッシュできるという。
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