スタッドレスタイヤとは、雪道や凍結路で滑らず、安全に走行できるように開発された冬用タイヤのことです。
以前は、タイヤに鋲(びょう)が打ち込まれた「スパイクタイヤ」が冬用タイヤの主流でしたが、積雪のない道路を走行するとアスファルトを削ってしまい、粉塵公害を引き起こしたため使用されなくなりました。
現在は、鋲を使わない「スタッドレスタイヤ」が開発され主流となっています。
夏タイヤとスタッドレスタイヤの大きな違いは「ゴムの硬さ」にあります。夏タイヤは、夏場の温度上昇に耐えられるよう硬いゴムでできており、雨などの濡れた路面でもグリップするようにパターン溝が表面に刻まれています。ゴムが硬い分、雪道でのグリップ力が弱く、雪道走行はできません。一方、スタッドレスタイヤは、雪道や凍結した道でも性能を発揮する必要があるため、低温域でもしなやかさを保つゴムを採用しています。また、滑りの原因となる氷上の水膜を除去するための工夫が施されています。
●︎ トレッドには細かい切り込みが施されています。これは「サイピング」と呼ばれるもので、太い溝でも排除しきれなかった水を、細かい溝で吸い取り、タイヤと路面を密着させる働きを持っています。
●︎ スタッドレスタイヤでは、サイピングが細かく動くことで、エッジ効果を発揮し氷路走行性能を向上させる働きも持っています。
凍った路面が原因ではなく、路面の氷上に融けた水が膜をつくるためです。
この水膜が、タイヤと凍った路面との間に入ってタイヤを滑らせます。
“水”以外での滑る要素は、低温時のゴムの硬化です。ゴムは、通常温度が下がると硬くなるという性質をもっています。温度が下がると水は溶け出しにくくなり水膜をつくる要因は減りますが、低温でゴムが硬くなってしまうと滑りやすくなります。低温時に硬化したゴムの表面は、路面への密着に必要な柔軟さや密着接地面積の減少につながり、「滑り」を誘発してしまいます。