側面衝突の際に車体やエアバッグと共に乗員を守る
クロストレックの内装トリムメーカーを知る | 2025/03


側面衝突時の乗員保護メカニズム
車両の側面に他のクルマや物体が衝突する側面衝突の場合、前面衝突や後面衝突と違って、衝突エネルギーを吸収・分散するために必要な空間が少なく、その空間の中で、乗員の傷害を最小限に抑える工夫が必要です。まず、ボディとドアの耐衝撃性を高め、骨格構造によってキャビン内の変形量を最小限に抑えます。さらに、車両に搭載されているセンサーで衝突を検知し、運転席及び助手席シートに搭載されたサイドエアバッグと、ドア上部のルーフラインに沿って搭載されているカーテンエアバッグを展開させて、乗員を守ります。この時、内装トリムの性能もとても重要で、さまざまな工夫をして乗員の傷害を最小限に抑えています。
そのカタチが命を守る
SUBARU車の内装トリムの安全性能の工夫について、いくつかご紹介しましょう。冒頭で紹介した側面衝突時の乗員保護メカニズムのうち、乗員への傷害を減らすために、内装トリムでは、形状工夫を加えています。
例えば、後席の乗員横のエプロントリムという部品は、骨盤の形状に沿って凹みを入れています。万が一の側面衝突の際には、この形状が大きな役割を果たします。このような凹みがあることで、下半身にかかる力を分散して、骨盤への入力を一ヵ所に集中させないようにし、骨盤骨折のリスクを低減することができるのです。クロストレックのリヤシートに座っていただくと、シートとドアの間にボコンと大きな凹みがあることにお気づきになると思います(メインカットのポインターで指した部分/下画像の破線で囲んだ部分)。

また、別の箇所で前席乗員横のセンターピラー(通称Bピラー)の内装トリムにも工夫を凝らしており、乗員の胸部エリアに沿って、凹みを設けています。これは、限られたスペースの中で前席シートバックに格納されたサイドエアバッグの性能を最大限有効活用することを狙ったものです。この凹みが、乗員横のスペースを拡大することで、展開したエアバッグの厚みを十分に使うことができ、胸部等上体への衝撃軽減効果を高めています。このようにSUBARUの内装には、少しでも乗員の安全を高めるための工夫が織り込まれています。

リアルワールドを見据えたSUBARUの安全ボディ開発
動画:国土交通省 独立行政法人自動車事故対策機構
JNCAP(Japan New Car Assessment Program)は、日本の新車の安全性能を評価するプログラムです。国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が実施し、衝突安全性能や予防安全性能を厳しい基準で評価します。クロストレックは、「自動車安全性能2023(JNCAP)」でファイブスター大賞を受賞することができました。
JNCAPの側面衝突の条件では、評価車両の運転席側の側面に、車両を模した質量1,300㎏の台車を55㎞/hで衝突させ、ダミー人形の頭部、胸部、腹部、腰部の傷害値を計測し、乗員保護性能を5段階で評価しています。前述したSUBARUの衝突安全の取り組みも相まって、クロストレックは全項目で満点を獲得することができました。

JNCAPのような第三者機関で評価される試験においては乗員の着座位置や気温など、すべてが定められた条件下で実施されていますが、リアルワールドの事故は必ずしもそれと同じ条件で発生するとは限りません。前席だけでなく後席に乗員がいる場合や、乗員の体格も試験で使用したダミーと同じ大人の男性だけでなく、小柄な方や子どもが座っているケースもあるでしょう。また、地域や季節によっては極低温下や空気が膨張する高温度下でクルマを使用している場合も想定しなければなりません。このように、あらゆるケースを想定し、どんな体格の方がどんなポジションで着座していても万が一の衝突時には乗員すべての命を守るための開発をしているのは、2030年に死亡交通事故ゼロ*という目標を掲げているSUBARUならではの取り組みです。その結果が、JNCAPでファイブスター大賞を受賞することにつながったと考えております。

私たちは、リアルワールドでSUBARUに乗っているすべての方の事故による傷害を少しでも軽減することを願って、クルマを開発しています。私から読者の皆様にお願いしたいのは、 “クルマに乗る際は前席だけでなく後席に乗車する方も常にシートベルトを装着し、なるべく正しい姿勢で乗車いただきたい”ということです。先ほど説明した内装トリムや、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグといった保護デバイスの性能が実際の事故で最大限の機能を発揮させるためには、シートベルトを正しく着用していることが大前提だからです。
*SUBARU車乗車中の死亡事故およびSUBARU車との衝突による歩行者・自転車などの死亡事故ゼロを目指す。


- 阿部徳秀(あべ のりひで)
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株式会社SUBARU 技術本部
車両安全開発部 衝突安全第二課鬼瓦の生産地として知られる群馬県藤岡市出身。屋根の上からにらみを効かせて地域の邪気を払うと言われている鬼瓦を、市内では今も随所で見かけることができるという。また、群馬県の名所・旧跡やゆかりの人物を紹介した上毛かるたの「さ」の札で「三波石と共に名高い冬桜」と紹介されている藤岡市には、青緑色の三波石の巨岩が立ち並ぶ景勝地“三波石峡”や、秋に花を咲かせる7,000本の冬桜が植えられていて紅葉と桜を同時に楽しむことができる“桜山公園”があって、シーズンになると多くの観光客で賑わっているそう。群馬県内の高等専門学校に通学していた頃から始めた神社巡りは、現在も継続しており、貴重なリフレッシュタイムとなっている。神社のある土地の歴史や土地柄を調べながら、なぜそこに神社が建立されたのかを推理するのが楽しいという。愛車でドライブがてら鎌倉や京都にも出かけ、さまざまな神社を訪れてきた中で一番のお気に入りは地元群馬の榛名神社だという。境内には苔が生えて神秘的な雰囲気が漂い、とても趣深い景色に触れることができると共に、他とは違った独特のパワーを感じられるそう。