【SUBARU on the Road】長野県松本市~北安曇郡松川村
藤島知子×フォレスター 身体によいものに出会う旅
ドライブ | 2024/12
モータージャーナリスト藤島知子がフォレスターのステアリングを握り、秋風吹く長野の山間と高原を爽やかに駆け抜ける旅に出た。
「趣味は何ですか?」と訊かれたら、私は迷わず「冒険ドライブ」と答える。モータージャーナリストは試乗に撮影、執筆と、寝ても醒めてもクルマのことに関わっている仕事。にもかかわらず、私はプライベートな時間が取れると分かると、つい思い立ったようにハンドルを握って、遠出してしまう習性があるようだ。
冒険ドライブは移動距離が長く、非日常に浸れるものほど、ワクワクのボルテージが高まる。それだけに、共に旅をするクルマ選びは重要だ。その点、今回の旅の相棒となったフォレスター STI Sportは、ハンドリングと乗り味を譲れない私にとって、記憶に刻まれていた一台だった。オフローダーらしさを強め、アウトドアに映える頼もしいデザインは非日常感を満喫させてくれそうだ。そこにSTI Sportとしての特別感をさりげなく纏うあたり、大人でもスマートに乗りこなすことができそうだ。
ラフロードも安定した走りで冒険の地へ
冒険ドライブは気ままに旅するのもいいが、深くその土地について触れるのも楽しい。そこで今回の旅のテーマは『身体によいものに出会う旅』とした。長野で秋の訪れを感じてみたいと、松本市奈川の山でキノコ狩りをし、安曇野の農園でりんご狩りをするプランを立てた。
中央自動車道を西へ向かって走っていると、運転席からの見晴らしがいいクルマであることを再確認する。SUBARUは飛行機会社がルーツの自動車メーカーであるだけに、ガラスエリアは広く、運転席からの死角が少ない設計を重視している。フォレスターはSUVでありながら、ミニバン並みに広いガラスエリアを備えているので、ドライブ中は移り変わる景色を堪能できる。
高速道路では、アイサイトの運転支援機能のひとつ、全車速追従機能付クルーズコントロールを活用することに。ステアリングのスイッチを操作して、前走車と一定の車間を保ちながら追従走行を開始。途中で渋滞に出くわしたが、アクセルやブレーキの制御が秀逸だし、操舵支援はベテランドライバーが運転しているようにスムーズだ。窓の外には緑の山々が連なり、都会では狭く感じていた空が次第に拓けていく。
塩尻ICで一般道に降りると、木曽路で知られる贄川宿、奈良井宿を経て、県道26号を野麦峠の方向に進んだ駐車場に到着。ここで、アウトドアガイド「だいじ屋」の関谷野枝さんと地元のキノコ名人の古畑富清さんと落ち合い、山の中を案内してもらうことになった。フォレスターで脇道に逸れると、落ち葉や小枝が散らばっている。足元は砂利で轍がある場所もあったが、220mmの最低地上高を確保し、四輪駆動のフォレスターにとっては朝飯前。一見するとボディは大きく見えるが、意外なほど車両感覚が掴みやすい。また、左前輪付近の状況はカメラで確認できるので、バンパーを擦るリスクを減らせそうだ。砂利道では路面の入力に負けず、安定した姿勢を保ちながら、軽やかな足さばきを披露してくれた。
キノコ狩りのポイントで歩き出すと、名人の古畑さんは笹の葉や小枝をかき分けて、道なき斜面を躊躇なく登っていく。足元をよく見ると、地面から花のように傘を広げたジゴボウ(通称:ハナイグチ)が自生しているのを見つけて収穫に成功。古畑さんによれば、野沢菜の背が伸びる時期にキノコがたくさん採れるそうだ。秋が深まると、雑木林ではシメジや松茸も収穫できるという。キノコ狩りを終えると、ガイドの関谷さんが採れたジゴボウを煮立てたお味噌汁を振る舞ってくれた。とろみがあるのに囓るとサクサクとした歯触りで優しく、懐かしい味だ。
旬の獲れたて食材を乗せて産地をドライブする悦び
キノコ名人の古畑さんは冬場になるとカンジキを履いて雪の斜面を登るそうで、山を歩く時に息を切らさずに登り切る体力と、鍛えられた足腰の強さに脱帽した。山の自然と向き合いながら、おのずと身体を鍛えられる環境は羨ましく、私も見習わなければなと思った。
お二人にお礼と別れを告げると、次はりんご農園へ。清流・梓川をなぞるようにして国道158号を北上していく。ダムやトンネルをくぐり抜けると、やがて、北アルプスの麓に田園が広がる安曇野の原風景が飛び込んできた。窓を開けて澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込むと、五感が研ぎ澄まされていく。そんな時、フォレスターは荒れた舗装路をものともせず、リラックスしたい私の気分に寄り添うようにして、ゆったりとスムーズな足取りを披露してくれた。
「北アルプス山麓に位置する安曇野は台風の影響を受けにくい土地で、元は扇状地。水に恵まれた土地です」そう語るのは、「山とりんご」農園の園主・平林達彦さん。祖父の代に始めたりんご畑を受け継ぎ、北海道から嫁いだ奥さまと共に8月中旬から11月中旬にかけて、13品種を育てるそうだ。
訪れた時期は、サンつがるやシナノドルチェの出番。特別栽培で育てたりんごは柔らかくて甘い。最近では無添加のコンフィチュールの瓶詰めやストレートジュース、チップスのような加工商品も販売しているそう。傷がついたり、鳥がつついたりんごを活用し、食品ロスを抑える取り組みを始めたという。手間暇かけてローストしたチップスは甘みが優しく、自然の恵みをたっぷり含んだ逸品といえた。
高原を目指して急勾配を駆け抜ける
締めくくりは、美ヶ原高原の思い出の丘を目指すことに。美ヶ原スカイラインは約11㎞に渡って急勾配と畝るようなカーブを荒れた路面で繋ぐ過酷なルート。重心が高いSUVで走るとなれば、クルマはフラつきやすく、もたつきがちだが、フォレスター STI Sportは安定した姿勢を保ちながら、しなやかに走り、クルマの動きを次の動作にスムーズに繋げていける。そんなふうにクルマと息を合わせてハンドリングを満喫していると、やがて頂上に辿りついた。雲の隙間から夕陽が漏れ出る神秘的な光景が拡がっている。
自然に触れ、人と繋がることで気づきを得た今回の冒険では、その瞬間だから出会える偶然を楽しんだ。慌ただしい日々を送る人にこそ試してみて欲しい冒険ドライブ。近郊の温泉地はもちろん、日本全国津々浦々、その地に足を運ばないと眺められない景色や食の楽しみを得ることは、何ごとにも代えがたい体験となる。
お気に入りの一台と冒険の旅に出ることで、気持ちを解放してみてはどうだろうか。
- 藤島 知子
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モータージャーナリスト
2002年よりレースに参戦する傍ら執筆活動をスタート。現在はレースで得た経験や女性目線をもとに自動車専門メディア、女性誌に寄稿している。テレビ神奈川の新車情報番組『クルマでいこう!』では出演16年目を迎え、クルマの愉しみをお茶の間の幅広い世代に向けてレポート。レース活動も継続しており、2024年は女性レーサーたちが競い合うKYOJO CUPにシリーズ参戦している。日本自動車ジャーナリスト協会理事、2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
- FORESTER STI Sport
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全長×全幅×全高 / 4640×1815×1715mm
最低地上高 / 220mm
エンジン / 1.8L DOHC 直噴ターボ“DIT”
トランスミッション / リニアトロニック
駆動方式 / AWD(常時全輪駆動)
タイヤサイズ / 225/55R18
今月のルート
諏訪IC〜だいじ屋〜山とりんご 農園&直売所〜美ヶ原高原 思い出の丘
※美ケ原スカイライン(林道美ケ原線)は冬期通行止め期間(11月下旬〜4月下旬)が設けられる場合がございますので、該当期間にお出かけされる場合はご注意ください。また、通行止め期間は降雪状況等により変更する場合がございます。
今月の紹介ポイント
- だいじ屋
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長野県松本市奈川寄合渡990-22
https://daiji-outdoor.com/
TEL.090-7807-1654 - 山とりんご 農園&直売所
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長野県北安曇郡松川村川西3391-5
https://yamato-ringo.com/
TEL.050-3692-9339
営業期間 9月初旬から11月下旬
営業時間 9時から16時30分
Photographs●神村 聖
※こちらの記事は2024年秋号に掲載した内容です。