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アウトドアライフアドバイザー・寒川一 × レイバック開発スタッフが語る

LAYBACK“くつろぎ”の方程式 Vol.03

トピック | 2024/11

カートピア 森に囲まれたキャンプ場で焚き火を囲みながら座り、語り合う寒川一さん、齋藤茂さん、藤井忠則さん、中野徹さん。後ろにはレヴォーグ レイバックが停まっている | SUBARU

そのカタチに意味はあるか


カートピア レイバックの運転席に座る寒川さん。助手席側から説明をしている中野さん | SUBARU

寒川:レイバックは特に内装がキレイだなと思いました。ペダル類のデザインなども仕上げがていねいで、ステアリングも握り心地が良く、運転していて全てが良好でした。シートも材質の色の切り替え方や、ステッチを入れているところなどにくすぐられます。デザインにおいてはどのようにして“LAID BACK”を表現したのですか。

中野:ご指摘いただいたステアリングホイールやインテリアは、まさに触感や材質にこだわって開発したところなので、寒川さんに気づいていただけて光栄です。レイバックではエクステリア、インテリアのデザインコンセプトとして“凛”と“包”というキーワードを掲げました。“凛”は、レイバックのベースとなるレヴォーグが持っているスポーティで精悍なイメージです。“包”は、それを大らかさや豊かさで包み込むことをイメージしています。“凛”と“包”を掛け合わせることで、温かみや大らかさを表現し、豊かで洗練されたイメージを創出しました。

カートピア レイバックのステアリングを握る寒川さんの手元 | SUBARU

レイバックとして最も特徴的なのがインテリアのカラーコーディネイトです。デザインコンセプトの“包”に相当する明るめのウォーム系のグレイ“アッシュカラー”を用いることで、レヴォーグとは違った世界観を表現しました。さらにダークグレイを組み合わせることで、“凛”と“包”ということを掛け合わせた表情を生み出しています。ここにカッパーというちょっとオレンジ色がかった黄金色のステッチを差し色として入れることで、豊かで華やかな印象を創出しました。

カートピア レイバックのフロントを見ながら語る中野さん。話を聞いている寒川さん | SUBARU

エクステリアではフロントフェイスが特徴的です。グリルとバンパーをひとつの大きな面としてとらえ、大らかな表情を作りました。横長のグリルウィングがワイドで安定した印象をつくり、グリル下のつながった一つの面が大らかに変化しながらバンパーコーナー部、サイドへとつながっていくことで、面が包み込む豊かな印象を与えました。

カートピア レイバックのフロントを見ながら語っている寒川さん | SUBARU

寒川:デザインの話をすると、これも僕らの世代の好みかもしれませんが、カタチだけのSUVとか、型で作った見せかけのステッチとか、意味のない形状というのが好きではないんです。革新的なデザインでもそこに理由があれば受け入れたいのですが、たとえばクルマのフロントグリルなど、なんでこういう形をしているのか? と、納得できないものが結構あるんです。SUBARUはそういう見かけ倒しのところがないという印象を持っているのですがいかがでしょうか。

カートピア 緑に囲まれたキャンプ場で語る、株式会社SUBARU 経営企画本部の中野徹さん | SUBARU

中野:たとえば、Aピラーを寝かせたり窓肩の位置を上げたりすると、デザインの自由度も増えるのですが、ドライバーからの死角も増えてしまいます。SUBARUは、クルマづくりのフィロソフィーとして安全性を最大限に重視しているため、Aピラーの角度や、ドライバー席から振り返って後側方を見たときの視界を確保するための窓肩の位置やピラーの太さなどは予め決められていて、デザイナーが変えることはできないのです。カーデザイナーとしては、もっと自由にクルマを描きたいという気持ちはありますが、運転しやすさを無視してデザインしたクルマづくりは、SUBARUのクルマづくりではないのです。

カートピア 寒川さんに火おこしをレクチャーしてもらっている中野さん | SUBARU
寒川さんからメタルマッチの手ほどきを受けて焚き火に着火する。着火剤は使わず、拾い集めた杉の枯れ葉を敷き、その上に折った枯れ枝を放射状に重ねて、なるべく大きな火の塊が落ちるようにメタルマッチを擦り下ろす。

グリルのお話をすると、SUBARU車の場合ヘキサゴン(六角形)をモチーフにしています。これは、六角形が構造的に強いということから、グリルから始まってボンネット、フロントフェンダー、キャビンへと流れていくデザインにおいて、堅牢性、安心感をイメージできるデザインとして採用しています。また、SUBARUのエンブレムの六連星を由来にしているなど、デザインする際に形に意味を持たせるということは意識してやっています。

カートピア 緑の生い茂るキャンプ場を背景に語る寒川さん | SUBARU

寒川:なるほど! 私も焚き火台の開発など、アウトドアで使う道具のプロデュースを行っているのですが、プロダクトデザインにおいて大切なのは、そういうスピリットやバックボーンなんです。第一に目的があって、その目的ににじり寄れるデザイン・カタチにはブレがありません。僕らが手に入れたいのはそういう思想をもって作られたものなんです。レイバックのデザインは、細部に至るまで作り手の思いがこめられていて、クルマとしての完成度がとても高いと感じました。何よりプロダクトとして、使っていて不満がないということが大きいですね。トラブルシューティングなども徹底的に成されているのではないでしょうか。こうしたことすべてを含めて、初めて本当の“LAID BACK”くつろぎのひとときが訪れるのだと思います。

カートピア  | SUBARU

スムーズに乗り降りできるシート

カートピア 運転席に座る寒川さんにシートについて説明する中野さん | SUBARU

「シートの造形も、ベースとなったレヴォーグはシート座面のサイド部分を高くしてスポーティな座り心地としているのですがレイバックの場合は乗降性の良さを考慮してレヴォーグに対して高さを低く抑えています」(中野)

「なるほど。それで乗り降りもスムーズにできたのですね」(寒川)

「“凛”と“包”を掛け合わせることで、温かみや大らかさを表現し、豊かで洗練されたイメージを創出しました」

カートピア 焚き火を囲みながら語る、株式会社SUBARU 経営企画本部の中野徹さん | SUBARU
中野 徹

経営企画本部 価値づくり推進室 デザイン部

レヴォーグ、WRX、レイバックなどのエクステリア、インテリアデザインの全般を担当。

Photographs●海老根里実

※こちらの記事は2024年秋号に掲載した内容です。

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