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体格に適した拘束力を提供する

クロストレックのシートベルト

メーカーを知る | 2024/10

カートピア cocosuba | SUBARU
カートピア 3点式シートベルトを指す技術本部 車両安全開発部 衝突安全第二課 柿澤 龍一 | SUBARU

シートベルトの基本メカニズム


3点式シートベルトとは、肩から斜めに掛けて上半身を通り、さらに腰部分を左右に渡して骨盤を拘束するベルトのことです。シートベルトは、衝突事故の際に頭部がフロントガラスやステアリングに衝突することや、乗員が前方に投げ出されるのを防ぐ乗員拘束システムです。

ポリエステルの繊維を織り込んで造られたベルト(ウェビング)は、2トン以上の荷重に耐えられます。通常は運転の妨げにならない拘束力ですが、車両が衝突を検知した場合、ピラー下部に格納されている巻き取り装置(リトラクター)のプリテンショナー機能が作動し、瞬時(約0.01秒)にウェビングを引き込んで乗員をシートに拘束します。衝突エネルギーが大きく、ウェビングに所定以上の荷重がかかると、フォースリミッターが働きます。これにより、ロック機構が緩み、ウェビングが一定の荷重を維持しながら送り出されることで、シートベルトによる乗員の胸部圧迫が軽減されます。

SUBARU車では、ベルトの留め具(バックル)にはめ込むT字型の差し込み金具(タング)にロック機構を組み込んだロッキングタングを採用しています。これにより、腰が前方に移動する際に、腰側のウェビングに連動して上半身側のウェビングが引っ張られることを防ぎ、胸部圧迫を軽減します。

より緻密なクロストレックのシートベルト


クロストレックは、乗員の体格に合わせてウェビングの拘束力を最適化するアダプティブフォースリミッターを採用しています。通常のフォースリミッターは、リトラクターの中心部にある金属製の軸(トーションバー)のねじり変形を利用して、ウェビングが引き出される荷重を制御します。しかし、小柄な女性や子供は体格の良い成人男性と比べて身体の耐性が低いため、同じ拘束力では胸部へのダメージが大きくなってしまいます。

アダプティブフォースリミッターは、ねじり変形の異なる2本のトーションバーを備えています。通常は従来のトーションバーを使用しますが、乗員が小柄な場合、衝突時にプリテンショナーが作動した直後、瞬時にねじり変形の大きいトーションバーに切り替わります。これにより、拘束力が弱まり、乗員へのダメージを軽減します。

乗員の体格は、運転席ではシートスライドセンサーから得たシートポジションの情報を基に判別し、助手席ではシートとフロアの間に配置された4軸の乗員検知センサーから得た情報を基に、子供や小柄な方と大柄な方を識別します。

カートピア アダプティブフォースリミッターを採用したクロストレックのシートベルト | SUBARU
アダプティブフォースリミッターを採用したクロストレックのシートベルト。右端の巻取り装置(リトラクター)に取り付けられた円形のパーツが瞬時にねじり変形の大きい軸(トーションバー)に切り替えます。
カートピア アダプティブフォースリミッターを説明する柿澤さん | SUBARU

リアルワールドの事故に備え、
満点の先にある安全を突き詰める


SUBARUらしいところといえば、アダプティブフォースリミッターのようなコストのかかる装備を国内仕様、海外仕様いずれにも標準装備として採用していることでしょう。これはどの国のお客様にも、どんな体格の方にも“安全”を提供したいという思いがあるからです。この度、クロストレックは国内の自動車アセスメント『自動車安全性能2023』でファイブスター大賞を受賞しましたが、私たちの目標はあくまでもリアルワールドで生じる事故に対して、安全なクルマを造ることです。それは、情報公開されている自動車安全性能2023の結果を詳しく見ることで分かります。

カートピア 『自動車安全性能2023』で5スター大賞を受賞したクロストレックの安全性を語る柿澤さん | SUBARU

フルラップ前面衝突試験の結果を見てみましょう。この試験では55㎞/hでコンクリート製のバリアに正面衝突させ、ダミーが受けたダメージを部位ごとに詳細に測定します。小柄な大人の女性(身長150㎝、体重約49kg)を模したダミーを助手席に乗せて行った『乗員保護性能試験(助手席)』の項目は、試験を受けた16台全車がLEVEL5の満点評価を得ています。

その中で、クロストレックを含む6車種が合計得点12.00/12で100%の得点率を獲得しました。特に、シートベルトによる胸部への圧迫を計測する「胸部変位量」の項目では、クロストレックは7.30mmで、2番目に少ない車両の12.50mm(+5.2mm)や、試験を受けた16台全車の平均値17.33mm(+10.03mm)と比較しても優れた結果を示しています。この結果は、クロストレックのアダプティブフォースリミッターが効果的に機能している証拠です。

世界各国で行われている自動車アセスメントでは、試験ごとに安全性の閾値が設定され、それをクリアした車両は満点の評価を得ることができます。しかし、SUBARUが追求しているのはリアルワールドでの事故に対する安全性であり、満点がゴールではありません。2030年に死亡交通事故ゼロ*1を目指して、さらに高い速度域での衝突においても拘束装置が適切に機能するよう、より厳しい衝突条件下での研究開発に取り組んでいます。

クロストレックの安全性能は、単なる試験結果にとどまらず、実際の事故から乗員を守るためのものです。SUBARUは、どの国のお客様にも、どんな体格の方にも”安全”を提供することを使命としています。この度の試験結果は、その取り組みが確実に実を結んでいることを示しています。

*1 SUBARU車乗車中の死亡事故およびSUBARU車との衝突による歩行者・自転車などの死亡事故ゼロを目指す。

クロストレックのフルラップ前面衝突試験 運転席のダミーと比べると助手席のダミーは小柄なことがわかります。
動画:国土交通省 独立行政法人自動車事故対策機構

今月の語った人

カートピア 株式会社SUBARU 技術本部 車両安全開発部 衝突安全第二課の柿澤 龍一さん | SUBARU
柿澤 龍一(かきざわ りょういち)

株式会社SUBARU 技術本部
車両安全開発部 衝突安全第二課

愛知県名古屋市生まれ。高校卒業まで市街地で育ったが、大学進学を機に福井県に住むようになり、自然に囲まれて暮らす楽しさに目覚め、休日には車で海や山に出かけるようになり、ドライブ好きとなる。これまでに、沖縄と北海道を除く全都府県を車で走破した。特に印象に残っているのは、福井県と岐阜県境にある林道冠山線。狭くて運転には注意が必要だが、自然の中を走る気持ちよさは格別で、周囲に雑光がないため星空の美しさも一段と際立っていた。2023年11月には、通行不能区間のあった国道415号「冠山峠道路」が開通した。同様に、福井県と岐阜県を結ぶ国道154号もお気に入りの道。険しさから「酷道」と呼ばれることもあるが、変化に富んだ自然景観を楽しむことができる。第二の故郷となった福井県のお勧めは、親鳥を意味する「ひね鶏」を用いた料理。肉は硬めだが、鶏の旨みや風味を堪能できる福井の名物。お気に入りのレシピは、シンプルに塩と胡椒を振ってニンニクで炒め、ポン酢でいただく「ひねポン」。今でも一年に3回は福井に行き、ひね鶏を買って帰るそう。

エンジニアがアドバイス

シートベルト装着時のチェックポイント


万一の事故の際にシートベルトやSRSエアバッグなどの安全装備が本来の機能を十分に発揮するために、装着時に気をつけたいチェックポイントを聞きました。

カートピア シートベルト装着時のチェックポイントを解説する柿澤さん | SUBARU

ポイント①:着座姿勢

まず、走行中の背もたれは可能な限り立ててください。

背もたれを倒しすぎるとベルトやエアバックの適切な拘束力が得られなくなります。

クルマに乗って着座する際に、座面と背もたれが接している部分に腰を落とし込むようなイメージで深く座ります。腰の後ろに隙間がなく、背中から脚までがぴたりとシートに収まっているかチェックしましょう。

ポイント②:ベルトの高さ

シートポジションが決まったら、シートベルトをゆっくり引き出してタングをバックルにしっかりと差し込みます。その際、シートベルトは鎖骨に当たるようにショルダーアジャスターを調整して高さを調整してください。首に当たったり、肩から外れて腕にかかったりしていないでしょうか?ベルト全体がしっかり肩に当たっているかチェックしましょう。

カートピア ベルトの高さを変更しているイメージ | SUBARU

ポイント③:腰部ベルト

腰骨のできるだけ低い位置にかかるように、ベルトを引いて腰部に密着させましょう。腹部ではなく、腰骨にかかっているかチェックしてください。

カートピア 腰部ベルトの装着イメージ | SUBARU

ポイント④:ねじれ、緩み

最後に、シートベルト全体を確認し、ねじれや緩みがなく、しっかりと身体に密着しているかどうかチェックしましょう。

*SUBARU車は、さまざまな体格の方に安全で快適な乗車姿勢をとっていただけるよう、運転席・助手席8ウェイパワーシートやランバーサポートなどをご用意しています。(運行時は、シートに座布団を敷いたり腰の後ろにクッションを置いたりしないようにしてください)

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